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b)縫合骨Ossasuturarum, Nahtknochen

 過剰骨はいろいろな様式であらわれるものである.靱帯や腱の全長のうち,ある限られた部分が骨化することによって過剰の骨が生じることについては,舌骨のところで述べた(180頁).また成長につれて骨化して消失すべき縫合が残っているために,他の一連の過剰骨が生じる(前頭縫合,横後頭縫合など) (図212, 264, 273).この場合には骨数の増加の原因が生体活動の低下に,すなわち若い発育段階にとどまってしまうことに帰せられるものである.さらに1つの骨に異常な骨核が形成されて,骨数の増加をおこすことがある.縫合骨はこの種類に属するものなのである.

 付加骨の最初の原基はふつう小さいいくつもの島をなして現われ, それがたがいに融合する(図163).したがって縫合骨の出現は正常な過程をその基礎としてもつのである.縫合骨には次の2種が区別される:

1. 本来の縫合骨Ossa suturarum, eigentliche Nahtknochen.その存在がとくに異常とはいえない縫合によって,島のようにとり囲まれて生じる大小さまざまの骨である(図265).

2. 介在骨Ossa intercalaria, Schaltknochen.大小さまざまの骨が,他のもっと大きい骨の面の中に,正常の縫合とは無関係にはまりこんでいるものである.前頭骨や側頭骨などの中に,それ自身の縫合によってとり囲まれた骨島が認められることがあるのがこれである(図266).

 縫合骨はその最も珍しいものさえも, 左右対称に出現するのが普通である.狭義の縫合骨は頭蓋のすべての骨に一様の頻度で現れるわけではない.人字縫合内にあることが最も多く,そこでは時として多数に認められる.人字縫合が複雑な鋸歯状をなすという正常な現象が,この領域に縫合骨がしばしば出現することの基礎になっていると考えられる.縫合骨の出現頻度は矢状縫合およびその冠状縫合との結合部ではさらに低く,冠状縫合および鱗状縫合となるといっそう稀になる.頭頂骨と蝶形骨大翼との間や,頭頂骨と側頭骨の鱗部および乳突部との間でも,縫合骨が時どき認められ,通常対称的である.ところで全縫合に100以上もの介在骨が散在している頭蓋もあるのであって,さらにほとんど介在骨だけで出来ているかと思われるような頭蓋もある.(Jung, Animadversiones quaedam de ossibus generatim et in speciedeossibus raphogeminantibus ct. Basileae 1827. )

 前に泉門(後述)のあったところに現れる縫合骨はまた泉門骨Fontanellknochenとよばれる(図267).

[図264]頭蓋冠を上からみる.前頭縫合(十字の上へ伸びた部分) (Springerによる)

[図265]縫合骨および

[図266]介在骨

a縫合骨, b介在骨, s縫合

[図267]泉門骨チロールのOberau生れの短頭の人の頭蓋.泉門骨は矢状縫合に属して大泉門の位置にある.

 

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最終更新日13/02/03

 

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