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 篩骨甲介より下のどの鼻道からも副鼻腔がのび出し得る.中鼻道には副甲介として篩骨胞と鈎状突起があるが,この中鼻道からはとくに多数の副鼻腔が生じる.すなわちここから前頭洞・上顎洞・前篩骨洞が発生し,一方上(および最上)鼻道からは後篩骨洞が形成される.そして蝶形骨洞は鼻腔のうしろ上のすみから発達する.――Peter, K., Die Entwicklung der Nasenmuscheln beim Menschen. Arch. Mikr. Anat.,80. Bd.,1912.――同著者のAtlas der Entwicklung der Naseusw. Jena1913.

3. 骨口蓋Palatum osseum, knöcherner Gaumen(図246248, 272, 275)

 骨性の口蓋は左右の上顎骨の口蓋突起と,左右の口蓋骨の口蓋板とによって作られている.これらの4部分がたがいに合するところが矢状に走る正中口蓋縫合Sutura palatina medianaと,横に走る横口蓋縫合Sutura palatina transversaである.また若い人の骨では切歯縫合Sutura incisivaが完全にあるいは痕跡的に残っている(図246248を参照).正中口蓋縫合の前部には切歯管Canalis incisivusが開いている.口蓋の後部には外側に寄って,口蓋骨と上顎骨のあいだに大口蓋孔Foramen palatinum majusがあり,口蓋骨の錐体突起の中に小口蓋孔Foramina palatina minoraがある.

 上顎骨の口蓋突起の口蓋面は平滑でなく,デコボコしていて,大小多数のくぼみや孔がある.これに反して口蓋骨の口蓋板は多くは平滑である.大口蓋孔から前方へ開きながら2本か3本の口蓋稜Cristae palatinaeが走り,それによって口蓋溝Sulci palatiniが生じる.この溝は骨質の橋わたしによって部分的に管になっている

ことがある.この溝の中には大口蓋神経の枝と同名の動脈の枝とが走っている.骨口蓋の前と横の縁どりをしているのは上顎骨の歯槽突起である.うしろへは後鼻稜Spina nasali posteriorがつき出ている.

 口蓋の横の方向の反りぐあいとその高さは実にさまざまであって,これには歯列および歯槽突起の形成状態が重要な関係をもっている.

 正中線上を縦走する隆起線は,程度の差があるがかなりの長さと幅と高さをもっていて口蓋隆起Torus palatinus(v. Kupffer)とよばれる.これはStiedaによればその現われる頻度がすべての民族によって異るのであって,ペルー人とアイヌに最もしばしば存在し,黒人種に最もまれにみられるようである.W. Waldeyerはラプランド人の頭蓋で口蓋隆起をほとんど常に見出したR. Weinbergによればこの隆起はリヴオニヤ人でもしばしば認められる.(赤堀英三(Jap. Journ. med. Science, Anatomy, Vol. 4, P. 62~318)は日本人頭蓋において口蓋隆起を男女あわせて355例中153例(43%)にみとめた.)

γ)頭蓋の側部(図274)

 頭蓋を側方から観察すると,まず鼻骨・前頭骨・上顎骨・下顎骨・頬骨・頭頂骨・側頭骨・後頭骨の外面がみえる.これらの骨の外面についてはそれぞれの骨のところで述べたが,その相互関係もたやすく理解できるであろう.頬骨弓Arcus zygomaticus, Jochbogenが頬骨の側頭突起と側頭骨の頬骨突起とで形成されることもただちに明かである.

 立ち入って説明しなければならないのは,頭蓋の側壁にあるいくつかのくぼみであって,それには側頭窩Fossa temporalis,側頭下窩Fossa infratemporalis,翼口蓋窩Fossa pterygopalatinaがある.

1. 側頭窩Fossa temporalis(図274)

 側頭窩は上方とうしろは側頭線によって,前は頬骨と前頭骨の側頭面とによって,外側は頬骨弓の内面によって限られている.また下の限界は側頭下稜と頬骨弓の下縁とによって定められ,ここで側頭窩が側頭下窩に移行するのである.側頭窩の内側壁すなわち側頭平面Planum temporaleは頭頂骨・側頭鱗・前頭骨の側頭面・蝶形骨の大翼によってつくられている.側頭窩の大部分は側頭筋によってみたされている.

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最終更新日13/02/03

 

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