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肩峰の上縁の外側縁の近くに鎖骨と結合する卵円形の関節面があって,肩峰関節面Facies articulari sacromiiとよばれる.

 関節面には上腕骨の頭をいれる関節窩Fossa articularis, Gelenkpfanneがある.関節窩は浅い凹面をなして,西洋ナシの形をしており,上方の細くなった部分で1つの突起に接している.この突起は関節上結節Tuberositas supraarticularisとよばれ,上腕二頭筋の長頭の腱が起るところである.また関節窩の下には腋窩縁に関節下結節Tuberositas infraarticularisがあって,上腕三頭筋の長頭の腱の一部が起るところとなっている.

 関節窩の内側には肩甲頚Collumscapulaeがある.肩甲骨の上縁から板状に強くおしつけられた形の突起が,ほとんど垂直に関節窩の上へ出て,すぐまた直角に前外側へまがって,円味をおびた先端におわる.これが烏口突起Processus coracoides, Rabenschnabelfortsatzで,諸筋(小胸筋.烏口腕筋・二頭筋短頭)および靱帯が起始・停止するところになっているばかりでなく,肩峰が後上方からしたように,肩関節を前上方から被って保護しているのである.肩峰の面と烏口突起の面とはたがいにほぼ直角をなしている.

 肩峰は関節面より外側へ4cm,烏口突起は2cmだけのび出している.

 肩甲骨の上縁Margo cranialisは3縁のうち最も短くて,烏口突起のつけ根のところに肩甲切痕Incisura scapulaeというきれこみをもっている.まれにはこの切痕が骨質でとり囲まれて孔になっていることもある.2番目に長い腋窩縁Margo axillarisには,関節窩のすぐきわに関節下結節がある.椎骨緑Margo vertebralisは3縁のうちで最も長い.この縁は必ずしも凸出しておらず,多数例で直線あるいは凹の線をなす(H. Frey,1924).椎骨縁が凹の線をなすときは舟状肩甲骨Scapula scaphoidesという.

 舟状肩甲骨はひよわな人に頻度が高い.多くの著者(Gravesその他)によって退化的な徴候と考えられたが.Kajava(Duodecim 1924.およびH. Frey(Z. Anat. Entw.-gesch., 74. Bd. )によればそうではない.椎骨縁の人種による差と男女の差は厳密な意味では存在せず,その形は肩甲骨のはたらきと筋肉の発達程度とに左右される.つまり舟状肩甲骨ははっきりした機能型Funletionstypusだというのである.

2. 鎖骨Clavicula, Schlüsselbein(図281,282,360)

 鎖骨は胸骨の鎖骨切痕から肩峰にまでのび,S字状にまがって,成人では12~15cmの長さがある.内側3分の2の長さにわたって前方に凹,それより外側では後方に凹の轡曲を示している.

 胸骨端Extremitas sternalisは太くなっており,肩甲端Extremitas acromialisは扁平で幅が広くなっている.両端にくらべれば中央部はほつそりしているが,頑丈で,ここが管状骨の骨幹にあたる部分である.

 胸骨端の関節面は胸骨関節面Facies articularis sternalisとよばれ,凹面と凸面をともにそなえて三角形に近いかたちをしている.肩峰関節面Facfes articularis acromialisは卵円形で,鎖骨の外方の端にあり,垂直におかれている.

 下面には鎖骨下筋がつくための浅くて幅のひろい溝がある.ここにはまた著明な栄養孔が1つある.その内側には肋鎖靱帯Lig. costoclaviculareの付着する著しい粗面があって,肋骨粗面Tuberositas costalisとよばれる.外側には広く伸びた烏口粗面Tuberositas coracoideaがあって,烏口鎖骨靱帯Lig. coracoclaviculareの付着部をなしている.

 先天性の鎖骨欠損(ふつう両側性)は,他の骨格異常に併発することが稀でない.とくに頭蓋の骨化異常と一緒にあらわれることがしばしばあり(22例中13例),かなり多くの例で遺伝関係があるらしい.この事実を説明するためにJ. W. Hultkranzは頭蓋冠の骨化と鎖骨の骨化とが,ともに胎生第2ヵ月にはじまるということを指摘している(Anat. Anz.,15. Bd.,1899).

 鎖骨は全身の骨格のうちで最も早ぐ骨化しはじめるものである.鎖骨の骨幹は結合組織性の骨化によって生じるのであって,軟骨で前もって作られるのではない(図104を参照).しかし胸骨端および肩峰端はこれと発生様式を異にしている.

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最終更新日13/02/03

 

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