Band1.216   

Peitznerは1450の手のうち中心骨Centraleを7の手で(0.48%)見いだした.しかし中心骨のほかにもなお多数の特異な骨が手根とその付近に存在する.図298,299はその概観を示す図である.

 手と足の骨絡における過剰骨の意味はレントゲンによる研究で明かにされた.すなわちこれらの骨は外方へ突出した骨格部において,骨化中心として現われるのであって,妨害ないし阻止的な諸因子の影響をうけて,主部すなわち"規則に合う"骨格要素("kanonische" Skeletelement)と合体することなく,その後も独立骨として存在するのである.手の中心骨や足の外脛骨篩骨Tibiale externumおよび三角骨Os trigonumの形態学的な意義はほぼ確定しているが,時に独立して存在する他の過剰骨の意義は決して確かめられているのではない.

 種子骨Sesambeineは胎児では成人よりも数が多い.つまり総数の平均をくらべると胎児の方が多いばかりでなく,胎児には成人で今まで観察されたことのない種子骨も出現するのである.まず中手骨と指節骨のあいだの横線に沿って現われる退化的な構造としての種子骨がある.人の胎児では,中手骨と指節骨のさかい目の掌側の種子骨の最高数は各指に2個ずつ,合計10個にのぼる.この数は下等な猿までふくめて,完全に発達した5本の指放線をもつすべての哺乳動物にみられている数と全く一致する.種子骨は人では完全に発達した指放線で退化しており,哺乳動物では退化した指放線で退化している(Pfitzner).

 手背の側の種子骨は,人では今まで第1背側種子骨Sesamum dorsaleIだけしか観察されていない.

 母指の屈側に,基節骨と末節骨のあいだの関節のところに,1つの種子骨が人ではしばしば認められ,多くの哺乳動物ではこれが常在する.しかしこれは,母指の末節骨が2つの指節骨に相当するゆえに,近位第1種子骨SesamoidesI. proximaleと呼ぶべきものである.人ではふつう遠位指節間種子骨Sesama interphalangica distaliaはせいぜい結合組織性のものが存在するに過ぎない.Pfitznerはわずか3つの手において,軟骨性の関節面をもつ骨性の種子骨を示指に見たにすぎなかった.

 人の足の小指においては,中節骨と末節骨との融合の結果,単一の末節骨が生じて,その中で中節骨に当る部分が,もはや"かたち"というより"かたまり"という方がよいような状態で存在している.母指でも同じことで,その末節骨は中節骨と末節骨の両要素を含んでいるのである(Pfitzner).

[図298,299]過剰手根骨の模型図 図298は背側面,299は掌側面 手根の円蓋を1平面上にひろげたものと考える.左手(W. Pfitzner,1901)

1. Triangulare(前腕中間骨Intermedium antebrachii)-2. Metapisoid(二次豆状骨Pisiforme secundarium)-3. Scaphoid(橈側舟状骨Naviculare radiale)-4. Metascaphoid(尺側舟状骨Naviculare ulnare)-5. Menoid(固有月状骨Lunatum proprium)-6. . Propyramoid(橈側三角骨Triquetrum radiale)-7. Metapyramoid(尺側三角骨Triquetrum ulnare)-8. Pisoid(固有豆状骨Pisiforme proprium)-9. Parascaphoid(橈側骨Radiale)-10. Epitrapezium-11. Episcaphoid(背側中心骨Centraledorsale)-12. Praescaphoid(掌側中心骨Centralevolare)-13. Epimenoid(月状上骨Epilunatum)-14. Hypomenoid(月状下骨Hypolunatum)-15. Epipyramoid(錐体上骨Epipyramis)-16. Parapyramoid(外尺側骨Ulnare externum)-17. Basitrapezium(固有大多角骨Trapezium proprium)-18. Basitrapezoid(固有小多角骨Trapezoides proprium)-19. Metastyloid-20. Kephaloid(固有有頭骨Capitatum proprium)-21. Sphenoid(固有有鈎骨Hamatum proprium)-22. Paratrapezium-23. Praetrapezium-24. Akrotrapezium(二次大多角骨Trapezium secundarium)-25. Praetrapezoid(二次小多角骨Trapezoides secundarium)-26. Epitrapczoid-27. Parastyloid-28. Styloid-29. Hypokephaloid(有頭下骨Subcapitatum)-30. Epikephaloid(二次有頭骨Capitatum secundarium)-31. Prokephaloid(グルーベル小骨, Ossiculum Gruberi)-32a. Hyposphenoid(基底小鈎骨Hamulare basale)-32 b. Praesphenoid(末端小鈎骨または固有小鈎骨Hamulare terminale s. Os hamuli proprium)-33. Parasphenoid(ヴェサリウス骨Os Vesalianum)

S.216   

最終更新日13/02/03

 

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