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 種子骨は自由体肢の関節周囲骨periartikuläre Knochenと判断すべきものである.種子骨はすべて硝子軟骨性の原基から発生し,哺乳動物からうけついだものと見るべきである.最もよく発達した種子骨は下等の哺乳動物にみられ,これにくらべれば猿や人の種子骨は退化的あるいは痕跡的にみえる.種子骨は新しく獲得されたものではなく,古い骨格部分なのである.膝蓋骨も,それから腓腹筋の腓側頭のなかにあるFabellaと呼ばれるものも種子骨である.

 常在しない種子骨の出現頻度については,Pfitznerのくわしい資料を見られたい.さらにPfitzner, W., Über Brachyphalangie und Verwandtes. Verh. Anat. Ges,1898. を参照せよ.

b)下肢の骨(Ossa extremitatis pelvinae)

 下肢の骨格も上肢の骨格と同様に2つの部分からなる.すなわち下肢帯の骨自由下肢の骨である.

α)下肢帯の骨Ossa cinguli extremitatum pelvinarum

 下肢帯Beckengürtelは寛骨Os coxae, Hüftbeinという各側に1つの骨からなる.両側の寛骨は前方で相寄って結合しているが,後方では間隙が残っていて,そこは仙骨との密接な結合によって閉じられている.両側の寛骨と仙骨とをあわせて骨盤Pelvis, Beckenという.尾骨はもともと骨盤に属するものでないが,人体の解剖学では臨床上の理由から骨盤にいれて考えることが多い.

寛骨Os coxae, Hüftbein(図300304)

 寛骨は腸骨Osilium,坐骨Os ischii,恥骨Os pubisの3骨からなる.これらの3骨は寛骨臼のところで相合し,その結合線は寛骨臼の底を中心として放射状に3方向へ伸びている.成人ではこの結合線は全然みえなくなっていることが多いが,若い人では年令の低いほどよく認められる(図300).

 寛骨臼Acetabulum(酢を入れる小鉢Essignäpfchenの意味のラテン語)は深く半球状にくぼんでおり,その縁はひとところで切れて寛骨臼切痕Incisura acetabuliをなしている.寛骨臼の内面には滑かな帯状の部分があり,新鮮な骨では軟骨で被われている.これが月状面Facies lunataである.寛骨臼の底は寛骨臼窩Fossa acetabuliとよばれ,粗面をなしていて軟骨で被われない.恥骨と坐骨のあいだに閉鎖孔Foramen obturatumという大きい孔があいている.

a)腸骨ilium, Darmbein(図300304)

 腸骨の寛骨臼に属する厚い部分は腸骨体Corpus ossisiliumとよばれる.その上方には扁平なシャベル形の骨部が高く上に伸び,これを腸骨翼Ala ossis iliumという.

 腸骨翼の内面は前の方の部分は平滑で,少しへこんで腸骨窩Fossa ilicaをつくっている.腸骨窩にはその後縁の近くに1つの大きい栄養孔がある.内面の後部には耳のかたちをした大きい関節面がある.これは仙骨と結合する部分で耳状面Facies auricularisとよばれる.この関節面のうしろには後縁にまで達するデコボコした領域があって腸骨粗面Tuberositas ilicaとよばれ,靱帯群が付着する.

[図300]13才の少年の寛骨3つの部分がまだ分離している(1/3)

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最終更新日13/02/03

 

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