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 腸骨窩は弧をえがいて走る弓状線Linea arcuataという稜によって,小骨盤に属する腸骨体の内面から分けられている.

 外面には3本の凹凸に富む線があり,2本は弓状に走って上臀線Linea g1utaea cranlalisおよび臼上臀線Linea glutaea supraacetabularisとよばれ,1本は直線状で後臀線Linea glutaea dorsalisとよばれる.

 腸骨にはさらに上・前・後・下の4縁がある.上縁は腸骨稜Crista ilicaとよばれ,S状にまがっており,幅がひろくて,外唇Labium externum,中間線Linea intermedia,内唇Labium internumという3つの隆起線をもつが,これらは必ずしも明瞭なものではない.腸骨稜の前端はいくらか外側へまがって,前腸骨棘Spina ilica ventralisに終っている.さらにその少し下方に腸骨結節Tuberculum ilicumがある.

 腸骨の後縁にも2つの棘があって,および下後腸骨棘Spina ilica dorsalis cranialis, caudalisという.腸骨の下縁は大坐骨切痕Incisura ischiadica majorの一部をつくっている.この切痕と腸骨の弓状線とが腸骨体と腸骨翼との境をなしている.

耳状面の縁にこれと平行に走る溝が時どき認められ,耳状[面]傍溝Sulci Juxtaauricularesとよばれる(図301).

b)坐骨Os ischii, Sitzbein(図302304)

 坐骨は坐骨体Corpus ossis ischiiと坐骨枝Ramus ossis ischiiとからなる.坐骨体は厚くて腸骨および恥骨と結合し,寛骨臼のおよそ2/5をつくっている.寛骨臼につづく薄くなった部分は坐骨枝の寛骨臼部Pars acetabularisであり,それがまた厚くなって坐骨結節Tuberossis ischiiをつくり,さらにそのむこうに坐骨枝の恥骨部Pars pubicaがつづく.体と寛骨臼部には3面と3稜がある.後縁には坐骨棘Spina ossis ischiiがつよく出ているが,前縁の坐骨閉鎖結節Tuberculum obturatorium ischiadicumは必ずしも明瞭ではない.

 坐骨棘は2つの切痕をわけている.すなわち棘の上方にはすでに挙げた大坐骨切痕Incisura ischiadica major,下方には小坐骨切痕Incisura ischiadica minorがある.

c)恥骨Os pubis, Schambein(図302304)

 恥骨は坐骨枝の恥骨部とともに小骨盤の前壁を形成し,また坐骨とともに閉鎖孔Foramen obturatumを囲んでいる.恥骨体Corpus ossis pubisと恥骨枝Ramus ossis pubisからなり,恥骨枝の2部分すなわち寛骨臼部Pars acetabularisと結合部Parssymphysicaは鋭角をなして相合し,ここに軟骨でおおわれた長卵円形の面がある.この面が他側の恥骨の同じ面と結合するので恥骨結合面Facies symphyseosとよばれ,またこの結合のことを恥骨結合Symphysis ossium pubisという.恥骨体は寛骨臼の一部をつくっている(図300).腸骨との結合部は腸恥隆起Eminentia iliopectineaという低い突起によって示されている.まれにはここに1つの棘ができている.

 寛骨臼部は体から発するとすぐ細くなり,内側へゆくにつれてまた広く高くなる.寛骨臼部には3面と3稜がある.上面は水平方向には凹,垂直方向には凸の弯曲を示し,後面は滑かで水平方向に凹の軽い弯曲を示している.面には斜め内側に向って走る1本の広い溝があり,これを閉鎖溝Sulcus obturatoriusという.上稜は鋭くて恥骨櫛Pecten ossis pubis, Schambeinkammをつくっている.後縁閉鎖稜Crista obturatoriaとよばれ,内側へ走って閉鎖孔の前縁となり,その1端に恥骨閉鎖結節Tuberculum obturatorium pubicumをもつ.また前縁は内側へ走って1つの結節に終っている,ここには恥骨櫛も伸びて来ており,恥骨結節Tuberculum pubicumとよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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