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 結合部は後下方に伸びて坐骨枝の恥骨部と結合している.

 前面には陰茎稜Crista phallicaというデコボコした隆起線が時どき明瞭にみとめられる.

骨盤Pelvis, Becken(図306312)

 寛骨は仙骨とともに骨盤という骨性の環をつくっている両側の恥骨は前方で恥骨結合Symphysis ossium pubis, Symphyseにおいて合している.ここから両側の恥骨の結合部が左右に分れて,弓状の角をはさむ.これは男性では多くは鋭角をなして恥骨角Angulus pubisとよばれ,女性では鈍角であって恥骨弓Arcus pubisとよばれる.骨盤は分界線Linea terminalis--すなわち岬角から腸骨の弓状線Linea arcuataに沿って恥骨櫛につづき,恥骨結合の上縁にまで達する線--によって大骨盤Pelvis major, großes Beckenと小骨盤Pelvis minor, kleines Beckenとに分けることができる.

 分界線には各側に3つの部分が区別される.すなわち仙骨部Pars sacralis, 腸骨部Pars ilica,恥骨部Pars pubicaである.

 大骨盤は側方と後方だけしか骨で囲まれていない.小骨盤は下すぼまりになっていて,大骨盤にくらべるとずっと完全に骨で囲まれている.しかし小骨盤のとくに側壁は,それから後壁も,強い靱帯群によっておぎなわれており,小骨盤の下口のかたちはこれらの靱帯によって大いに影響されている.

 小骨盤への上口すなわち骨盤入口Aditus pelvis, Beckeneingang,骨盤腔とその壁,ならびに骨盤出口Exitus pelvis, Beckenausgangの形態は両性において,しかしとくに女性において非常に重要な意味をもっている.それは生れてくる子供のからだが外界に達するために,どうしてもここを通りぬけねばならないからである.そのほかに骨盤腔とその壁の意義としては,あらためて述べるまでもなく,骨盤は仙骨と結合した下肢帯であるという重大な役目があることである.

 四足獣では下肢帯の脊柱に対する方向がヒトのばあいと違っており,骨盤管と骨盤がほとんど水平にむいている.ところがヒトが直立姿勢をとるようになったとい,骨盤も一緒に垂直の方向をとったわけではない.すなわちヒトの骨盤管の方向は決して垂直でなくて,水平に位置する傾向が四足獣よりずっと減じたという程度にすぎない.骨盤入口の面が水平面となす角を骨盤傾斜Beckenneigungとよぶ.この角は直立姿勢において,岬角から恥骨結合の上縁にひいた線を,正中面上の水平線と交わるところまで延長することによって測られる.すなわちこの後方へ開いた角が骨盤の傾斜角Neigangswinkelなのである(図311).傾斜角は男の骨盤では平均55°,女のでは60~65°である.従って女の骨盤の傾斜角は原始的状態を想わせる.ここで注意を要するのは,骨盤を大腿骨に固定している靱帯の緊張の程度によって,傾斜角が変動するということである.

骨盤の諸径Beckenlinien

 女の骨盤の入口および出口の大きさと形は,分娩のときの子供の通過に対して大きな意味をもっている.産科学において一定の測定線が用いられるが,その走行・名称ならびに長さは,学生諸君がすでにここで記憶しておくべきである.

a)骨盤入口の諸径(図311,312)

1. 縦径Diameter mediana(真結合線Conjugata vera)は岬角と恥骨結合のあいだの最短線である(11cm).(日本人女性で10.7cm(小金井・大沢),11.8cm(工藤)10.8cm(小野). 日本人の骨盤の計測値と文献の紹介は小野肇:日本人骨盤入口の研究(慈恵医大解剖学教室業績集第7輯,1952)が新らしい.)

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最終更新日13/02/03

 

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