Band1.226   

 骨盤入口と骨盤出口のほかに骨盤濶[部]と骨盤峡[部]が区別される.骨盤濶部Beckenweiteは寛骨臼の中点・第2および第3仙椎間の骨結合・恥骨結合の中央を通る.また骨盤峡部Beckenengeは仙骨の尖端・左右の坐骨棘の尖端・恥骨弓の頂点によって決定される.Nägeliによれば体格のよい婦人の多数において,仙骨の底は恥骨結合の上縁の約9cm上方にある.

 骨盤入口のかたちは岬角の位置によって著しい影響をうける.この点について高位の岬角をもつ骨盤と低位の岬角をもつ骨盤とが区別される.

骨盤の性差

 骨盤には個体差・年令差・人種差のほかに,なお男女の差がある.これはすでに若い年令段階において,またすべての人種において著しく認められる.女の骨盤では骨が男のより薄くて滑かである.またその腸骨は男のより平たくできている.女では骨盤入口は長軸を横にした楕円形で,しばしばほとんど円形である.岬角の突出の程度は少く,恥骨結合の高さは男より小さい.両側の恥骨の結合部がなす角は女の方が大きくて恥骨弓Arcus pubis, Schambogenとなっている.また女では両側の坐骨結節の距離が男より大きく,閉鎖孔は下の方で狭くなって,男のものよりいっそう三角形に近いかたちをしている.男の骨盤は側方からおされたようなかたちで,高さが女より大きい.男の閉鎖孔は卵円形である.全体として男の骨盤の特徴は「高さ」と「狭さ」であり,女の骨盤の特徴は「低さ」と「広さ」である.

 Shiino(Z. Morph. u. Anthrop.,17. Bd.,1914)の研究によれば,女の骨盤では寛骨臼の向きが男よりも多少前額方向に近く,さらに寛骨臼の深さが絶対的にも,またその曲率半径との相対的関係からみても,男の場合より小さい.

β)自由下肢の骨Ossa extremitatis pelvinae liberae

1. 大腿骨Os femoris = Femur, Schenkelbein(図305,313315,367)

 大腿骨はからだ中で最も長い骨で,ほかの管状骨と同様に2つの骨端と1つの骨幹がある.後者は体ともよばれる.

 上部には頭と頚がある.大腿骨頭Caput femorisは円くて,上方がいくらか平らになった球の全表面のおよそ2/3に相当する関節面をもっている.

 この関節面の中央より少し下方に1つの円つこいへこみがある.これは大腿骨頭窩Fovea capitis femorisとよばれ,大腿骨頭靱帯Lig.capitis femorisが付くところである.大腿骨頭ははなはだ長い大腿骨頚Collum femoris, Halsによって体についているので,関節頭が側方に向く傾向は,上腕骨におけるよりもいっそう著明である.また頚は垂直径よりも矢状径の方が小さい.つまり高さが大きいことを特徴とし,とくに体との結合部でそうである.これら2つのことは力学的に大きい意味をもっている.頚をこえた所,すなわち体の上端部は多数の筋が付着するために複雑な形をしている.まず目をひくのは大転子・小転子Trochanter major, minorとよばれる2つの強大なテコで,両者は後面で転子間稜Crista intertrochantericaという強い隆起によってつながりあっている.大転子の外側面は凸面をなし,内側面は短くて転子窩Fossa trochantericaというくぼみがある.前面には斜めに下内側方へ走る転子間線Linea intertrochantericaがみられる.この線は小転子の下方で体の後面に達し,そこからさらに伸びている.体の後面には小転子の外側に臀筋粗面Tuberositas glutaeaがある.この粗面がかなり強いたかまりにまで発達して,多くの哺乳動物に常在する3転子Trochanter tertiusをなしていることが少くない.

 大小の転子のあたりの下方につづくCorpus femorisの部分は前方に凸の軽い弯曲を示し,下にゆくほど著しく幅を増して,ついに脛側および腓側顆Condylus tibialis, fibularisという両関節結節に移行する.

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最終更新日13/02/03

 

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