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 体には3面があって,その1つは前に2つは側方にむいている.3稜のうち前方の2稜は非常にまるくなっているが,後方の1稜だけは大腿骨稜Crista femorisという突出して粗な隆線をなしている.大腿骨稜には2つの唇が認められ,内側唇および腓側唇Labium tibiale, fibulareとよばれる.腓側唇は臀筋粗面のつづきで,下方へ伸びて外側上顆にいたる.また内側唇は転子間線のつづきをなして脛側上顆に達する.恥骨筋線Linea pectineaという第3の短い隆線が小転子から骨幹に沿って少しの距離だけ下方へ伸びている.両唇のあいだは下方で開いてきて,そこにはさまれた面には膝窩平面Planum popliteumという名がついている.この平面の下の限界をなすものは両顆の上縁と,両顆のあいだを結ぶ横線すなわち顆間線Linea intercondylicaとである.臀筋粗面の下方には上向きの著しい栄養孔Foramen nutriciumが1つある.

 両顆は後面で顆間窩Fossa intercondylicaという深いきれこみによってたがいにへだてられている.腓側顆は内側顆より幅がひろく,前方へいっそう強く突出している.内側顆は腓側顆よりも上下径が大きい.

 しかし大腿骨の正常な向きにおいて,両顆はどちらも同じだけ下方へ突出している.両顆の下面を被って単一の大きい関節面がひろがっているが,その下面にはなお数個の部分を区別することができる.すなわち前部は1つの縦溝をもって,ここに膝蓋骨が接して滑るための面をなし,膝蓋面Facies patellarisとよばれる.膝蓋面の上方にあるくぼんだ部分は軟骨に被われない.膝蓋面は脛側および腓側顆膝蓋線Linea condylopatellaris tibialis, fibularis(図305)という2つの隆起線によって,側方の両関節面から区分されている.この両関節面はたがいに形が異る.

 これらの関節面の上方には,両顆の側面にそれぞれ突出部があり,脛側および尺側上顆Epicondylus tibialis, fibularisとよばれる.

 腓側顆の外側面には斜め前下方へ走る溝があって,膝窩溝Sulcuspopliteusとよばれる.この溝が外側面の稜に合するところで,この稜に屈筋[性]膝窩切痕Incisura poplitea flexoriaという浅い切れこみができている(図305),またもう1つのいっそう深い切れこみが外側上顆の外側稜にあって,伸筋[性]膝窩切痕Incisura poplitea extensoriaとよばれる.

 では大腿骨の頚と体のなす角度は男より小さく,またいっそう直角に近い.逆に言えば男ではこの骨の頚は女のよりも上向きについているのである.同時に女では骨盤の幅が男より広いから,直立姿勢において両側の大腿骨が下にゆくほど近よる程度は女の方が強く,しかもまた女の下肢は男のより短いから,この傾向はいっそう著しいものとなる.

 大腿骨もまた一上腕骨と同様に(205頁参照)一その長軸を中心にしてねじれているがその程度は上腕骨よりはるかにひくい.頚の軸と両顆の軸とがなすねじれの角度Torsions-Winkelは成人では25°であり(日本人で15~20. 前後である.(小川鼎三)),この角度は新生児ではもっと大きい(Nauck, Z. orth. Chir., 55. Bd. .,1931).

2. 膝蓋骨Patella, Kniescheibe(図318,319)

 膝蓋骨は大腿四頭筋の腱の中にある平たい三角形の骨で,その尖端はApex patellaeとよばれて下方に向いている.前面は粗であるが,後面は軟骨で被われた1つの関節面Facies articularisをなしている.関節面は上下に走る1本の稜によって大小不同の2部分にわかれており,多くの場合外側の部分の方が大きい.上縁はBasis patellaeという.

3. 脛骨Tibia, Schienbein(図316,317,320322, 368)

 二つの下腿骨Ossa crurisのうち,脛骨は内側にあって丈夫な方の骨である大腿と足の骨格との結合を介しているのはもっぱらこの骨である.

 上部は広くて厚いが,やはり横径の方が大きい.上部は腓側顆・内側顆Condylus fibularis, tibialisという2つの結節によってできており,両者は後面で1つの浅いへこみによって分けられている.

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最終更新日13/02/03

 

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