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 この部分には上に述べた個所のほかに,なお6つの領域が多少ともはっきり認められ,それぞれ膝交叉靱帯および半月の起始部や停止部をなしている(図320).

 腓側顆の後部はひさしのように伸びだしていて,腓骨の小頭と結合するための小さい卵円形の関節面をもっている.これを腓骨関節面Facies articularis fibularisという,腓側顆の縁には腸脛靱帯粗面Tuberositas tractus iliotibialisという1つの強い結節が突出している.

 脛骨の骨幹は脛骨体Corpustibiaeとよばれ,下の方ほど細くなっていて,3面と3稜をもっている.前稜Crista anteriorはS字状にまがっていて3稜中もっとも鋭い.前稜の上端は脛骨粗面Tuberositas tibiaeというザラザラした高まりをもって始つている.外側稜は骨間稜Cristain terosseaとよばれ,骨間膜の付着部をなしている.内側の脛側稜Margo tibialisはかどが鈍い.

  内側の脛側面Faciesti bialisはまるくなっていて,皮膚の直下にある.外側の腓側面Facies fibularisには,上の方に縦に走る1本の長い溝があり,この溝は下の方で前面に移る.後面Facies posteriorの上部には下内側方に伸びるデコボコした線があり,これを膝窩筋線Linea popliteaという. 膝窩筋線の下方に1つの大きい栄養孔Foramennutriciumが骨の奥へ通じている.

 下骨端は上骨端より細くて,またその矢状径より横径の方が長くなっており,その内側面に脛骨踝Malleolus tibiaeという下方につきでた太い突起をもっている.

 下骨端の下面には遠位関節面Facies articularisdistalisという四角形の関節面があり,矢状方向に凹の弯曲を示し,脛骨顆の外側面すなわち踝関節面Facies articularis malleoliにつづている.遠位関節面の後縁は前縁より短い.下骨端の外側面は軽くへこんで腓骨切痕をなしている.この切れこみは上部が粗で下部が平滑であって,腓骨の接するところである.

 腱の通る2,3の溝が下骨端の後面にある.その最もはっきりしているのは脛骨踝にあって,後脛骨筋と長指屈筋の腱のためのものであり,脛骨踝溝Sulcus malleoli tibiaeとよばれる.長母指屈筋の腱のための溝は外側にあって,はるかに弱い.

 脛骨は特有の形態変化を示すことがあって,そのときは体がサーベルの鞘のように平たくなって,後面が1つの稜をなしている.この変化は古代人の脛骨にも現代人の脛骨にもみられる現象で,扁平脛骨Platyknemie(platy:広い, knemie:下腿)という名がつけられている.

 脛骨頭の後傾Retroversion des Schienbeinkopfes.脛骨の上端部は成人では多少とも強く後方へまがっている.その関節面が水平面となす角度はGrunewald(Z. orth. Chir., 35. Bd.,1916)によればヨーロッパ人の成人で平均5.6°であるが,時には24°にもなることがある.(日本人で男12°, 女14°(鈴木文太郎),16°(椎野)である.)-Nauck(Z. orth., Chir., 55. Bd.,1931)は胎生期中には後傾が高度であることを明かにした(13.5°から39°にまで).しかし生後4ヵ月内に,すなわち子供が歩くことを習いはじめる前に,それが急速にたちなおる(Retzius, Z. Morph. Anthrop., 2. Bd.,1900).-後傾は1つの原始的状態であるという.これに対して,まっすぐに伸びた脛骨は進歩した系統発生的段階のものと考えられた.しかしNauckが研究して得た事実は,むしろ力学的な説明の方が正しいことを語つている.すなわち狭い子宮のなかで胎児が膝関節を強くまげていなければなちないことが,脛骨の後傾の原因と考えられるのである.

4. 腓骨Fibula, Wadenbein (図316,317,322,369)

 腓骨(ギリシャ語ではPeroneという)は下腿の後外側にあって,ほとんど脛骨と同じ長さであるが,それよりずっと細い.その骨幹は弯曲しており,凸側がうしろに向き,下半分ではいくらか内側に向っている.上端は腓骨小頭Capitulum fibulaeとよばれ,腓骨小頭尖Apex capituli fibulaeという尖端をもっている.腓骨小頭尖の下方に小頭関節面Facies articularis capituliという1つの小さな卵円形の関節面があって,脛骨の腓側顆との結合面をなしている.下端は腓骨踝Malleolus fibulaeとよばれ,小頭より幅も長さも大きく,脛骨踝より下方まで突出している.その内側面には距骨と接する三角形の関節面があって踝関節面Facies articularis malleoliとよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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