Band1.242   

上肢と下肢の骨格の比較

 比較解剖学的ならびに発生学的研究にもとついて,次の各部がたがいに相同であることが明かになっている.ここにごく簡潔に示しておく.

上肢

下肢

狭義の肩甲骨Scapula

腸骨Ilium

烏口突起Coracoid

恥骨坐骨Pubo-Ischium

上腕骨Humerus

大腿骨Femur

橈骨Radius

脛骨Tibia

尺骨Ulna

腓骨Fibula

肘頭Olecranon

(欠けている)

舟状骨Naviculare

月状骨Lunatum

距骨Talus

三角骨Triquetrum

豆状骨Pisiforme

踵骨Calcaneus   遠位部

               近位部

中心骨Centrale

舟状骨Naviculare

大多角骨Multangulum majus

第1楔状骨Cuneiforme I.

小多角骨Multangulum minus

第2楔状骨Cuneiforme II.

有頭骨Capitatum

第3楔状骨Cuneiforme III.

有鈎骨Hamatum

立方骨Cuboides

Eisler, P., Biol, Centralbl.,16. Bd.,1896.-Stieda. L, 同上誌,13. Bd.,1893.-Holl, Sitzber. Akad. Wiss. Wien,100. Bd.,1891.

II.全体としての骨格Das Skelet als Ganzes

1.骨格の位置

 骨格はからだの結合および支持組織の全体に属するものであって,この組織の中に存在する.

 結合および支持組織の集まりとして,体軸性achsialのものと,中隔性septalすなわち中間性intermediärのものと,周辺性Peripherischのものとが区別される(図357).周辺性のすなわち表皮下のものは皮膚葉dermales Blattと呼ぶこともできる.体軸性のものは脊索周囲葉Perichordales Blatち神経周囲葉Perineurrales B., 腸管周囲葉すなわち内臓葉Perigastrales od. viscerales B. にわかれる.神経周囲葉は後正中部で皮膚葉と相合する.図357aでは内臓葉はかきいれてないが,二重の輪--内側の輪は腸管上皮を示し,外側の輪は体腔の上皮を示す--のあいだに存在するわけである.腸管周囲葉と脊索周囲葉とのつながりについても,同様に頭のなかで補つていただきたい.

 脊索周囲葉からはなお中間葉すなわち中隔葉が出て,図では体腔の外側にあって,体腔および腎臓・生殖腺を外側からかこみ,前正中部で皮膚葉とつながっている.

 尾部では(図357b)体腔と内臓は欠如し,中間および腸壁周囲葉は相合して,なお血管だけをとり囲んでいる.

 頚部では(図357c)内臓葉が描かれているが,これは腸管の上皮と体腔の上皮のあいだにあって,なお1つの血管弓が加えられている.

 さて軟骨と骨とがこの支持組織の集まりの内部で,いかなる場所でいかなる範囲に分化しているかは,脊椎動物界において実に千差万別というよりほかはなく,たとえば最も下等な段階では骨や軟骨は全く分化していないのである.しかしそれはともかく,上に述べた考え方に従って,次のように骨格群を分類できるのである.

1. 体軸性(脊索周囲性・神経周囲性および腸管周囲性)骨格achsiales Skelet,2. 皮膚性骨格dermales Skelet,3. 中隔性骨格septales Sketet.

 脊索周囲性骨格Perichordales Skeletは哺乳動物とヒトでは,椎体と頭蓋底のこれに相当する部分とである.神経周囲性骨格Perineurales S. は椎弓と頭蓋底のこれに相当する部分である.また腸管周囲性骨格Perigastrales S. は鰓弓性器宮に属する頭蓋骨すなわち舌骨・茎状突起・鼓室小骨・下顎骨である.

 皮膚性骨格はヒトでは頭蓋円蓋の領域を除いては,体幹の骨格に骨または軟骨のかたちで現れることはない.

 中隔性骨格はすべての肋骨および退化的肋骨と,胸骨とによって代表される.肋骨を内臓性(臓弓性)骨格と混同してならないことは明かである.

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最終更新日13/02/03

 

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