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これらすべての骨格群に対して体肢の骨格はある程度独立した関係にある.おそらく原節から筋肉の塊りが体肢の原基の中へはいってゆくときに,同時にその筋肉に属する骨格の組材をも含有しているのであろう,またおそらく体肢の骨格は発生的に頚肋骨および腰仙肋骨と関係をもっと考えるべきものらしい,さらにおそらく,体肢の骨格は少くともかなり広範囲にわたって皮膚性骨格であると考えてよいようである.

[図357]脊椎動物の結合組織葉の模型図 Hatschekによる.a胴の横断, b尾の横断,c鰓部の横断,左では2つの鰓裂のあいだすなわち内臓弓のところを切ってあり,右では鰓裂のところが切られている.

2.骨の内部構築

 骨の海綿質はHermann Meyerがくわしく述べているように,総じて骨の梁や小板の不規則な集積で,しかもその梁や小板は厚いことも薄いこともあり,その配列のぐあいにしても網の目の荒いことも狭いこともあって,何の規則性もないという印象をあたえる.しかし海綿質の意味は,骨の大きな外形にかかわらず重量が大きくなりすぎないように骨質が配列しているというだけのことでは決してないのであって,海綿質はできるだけ少い骨質を用いて,外力に対する個々の骨の抵抗力をできるだけ高度に保証するように配列しているのである.海綿質の構築は目的にかなうようにうまくできていて,骨の静止時および活動時の力学と極めて密接な関係にあり,従って同一の場所では常に同一の構造が再現しているのである.この点では海綿質のうち,こまかい糸の網となつそ骨髄の支柱をなしている部分だけが例外で,これは当然のことである.ところが小梁の構築のこのような合目的性は,海綿質だけでなく緻密質にも認められるのであって,後者においては外力に対して抵抗すべき小梁が,向じ原理の要求するところに従って,圧縮し密集しているだけのことである.すなわち緻密質は密集すべくして密集した海綿質であり,海綿質は散開すべくして散開した緻密質である.骨は全体としてその形・大きさ・役割にふさわしい定まった何系統かの小梁からなり,それらの走行は肉眼ではなはだよく区別できる.このことは個々の骨についてばかりでなく,骨格全体についてもいえる.すなわち全骨格はつまり非常に多数の小梁系の集まりであって,それらが一定の線に従って平行したり分散したり合流したり交叉したり,1つの骨の境で中断されたり,次の骨に更めてまたひきつがれたりしているのである.裂隙線による方法SpaltmethodeによってBenninghoff(Verh. anat. Ges.,1925)は脱灰した骨についてこの線の走行を明かにし(図364),さらにそののち,この走行に骨格の被膜(軟骨膜および骨膜)の線維の方向が一致していることをも示した.

 全体として骨はできるだけ少い材料で,外力に対する抵抗ができるだけ強いように構築されているようにみえる.これをくわしくいえば,1. 骨の材料は非常にまばらに組立てられているので,それが緻密に圧縮されている場合よりもいっそう大きい体積を占める.2. 骨にはたらく最大の圧力および張力の方向に沿って個々の分裂要素(骨質の小板や小梁)が伸びているので,最も都合よく外力に対する抵抗力を発揮でぎるようになっている.

 ここで一端を壁面に固定し他端に荷重をかけた柱の例を観察し,その張力線と圧力線を示そう(図365).

 1本の柱の1端Bを壁に固定すると,最大および最小の垂直力の方向は2つの線系であらわされ,両線系は中軸と45°に交わり,柱の両縁と90°に,また両線系どうし90°に交つている.下方に凹の曲線は張力に,上方に凹の曲線は圧力に相当している.それぞれの曲線の端のうち急傾斜をなす端の方が最小の力,横に走って終る端が最大の力に相当している.従ってDおよびD1端ではこの張力は零になっているが,CおよびC1端では最大の価になっている.

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最終更新日13/02/03

 

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