Band1.252   

骨全体の剛性

 ある管状骨の断面積とその緻密質の剛性率がわかると,張力による破壊に対してこの骨の中央部が示す抵抗が計算でき『る.またもし或る管状骨が全長にわたって一様な性質をもっているとすると,張力に対するこの骨全体の剛性が計算できる.

 しかし骨はそれほど一様な性質でないし,その上筋肉の影響によって骨の形に多くの不規則性があるから,計算と実験とが多少ともくい違った結果を得るだろうということが,すでに初めから予想される.そのさい計算の結果は実験値よりもかなり高い数値になるのが普通である.だからどんな場合にも,張力および圧力に対する骨全体の剛性をきめる実験を欠いてはならない.

 O. MessereirはWerderの材料強度試験機を用いてヒトの個々の骨と骨複合体を研究した.骨複合体としては頭蓋と骨盤をしらべた.その結果,管状骨では25才の処女の上腕骨が800kg,大腿骨が1550kgの荷重でひきちぎられた.彼は多数の骨において伸張力に対する強さをしらべて次のような現象を見た.すなわち均等な横断面と均等な性状をもつ柱においては,中央部が最も折れやすいのであるが,彼がしらべた諸骨では骨幹部に骨折が起こらないで,骨のさらに柔かく弱い部分であるどちらか一方の関節端がおしつぶされて折れるのである.

 伸張力に対する剛性(抗張力)を求めるために鎖骨を試験したところ,耐えきれなくなって折れたときの荷重は次の通りであった.

男の平均

192kg

 大腿骨体では

女の平均

126kg

平均して

756kg

また上腕骨では

 大腿骨頚では

1女性で

600kg

男の平均

815kg

 橈骨では

女の平均

506kg

男の平均

334kg

 腓骨で

女の平均

220kg

男の平均

61kg

 尺骨では

女の平均

49kg

男の最高

290kg

 脛骨では

男の最低

180kg

最高

1650kg

女の平均

132kg

最低

450kg

こんなわけで伸張力に対する抵抗の最も大きい大管状骨は脛骨であるということが明かになった.--Stieve, H., Versuche über die Tatigkeitsanpassung langer Röhrenknochen. Arch. Entwickl. mech.,110. Bd.,1927.

頭蓋の剛性

 頭蓋の剛性に関する知見は外科学や法医学では大きい興味のあることである.従ってこの方面の学間が,それらの分野の人々によって著しく進められたことは当然である.それゆえ諸君はこれらの分野の教科書を読んでいただきたい.

頭蓋泉門Fonticuli cranii, Fontanellen (図352,375,376)

 泉門は胎児および新生児で頭蓋冠の骨のあいだにある大きなすきまで,ここは結合組織だけで閉ざされている.

 誕生のときにこのような隙間の比較的大きいものが6つある.そのうち2つは頭蓋の上の方で正中線上にあり,残りの4つ(各側2つ)は頭蓋底に近いところにある.前者は正中泉門Medianfontanellen,後者は側頭泉門Seitenfontanellenとよばれ,いずれも頭頂骨の4隅に当って存在している.

 正中泉門のうち前方のものは前頭骨と左右の両頭頂骨とのあいだにあり,うしろのものは両頭頂骨と後頭骨のあいだにある.前者は大泉門Fonticulus major (s. quadrangularis), große Fontanelle, Stirnfontanelle(前頭泉門)とよばれ,細長い四角形で,その4辺は2つずつ相等しく,うしろの1対の方が短く前の1対の方が長い.そして鋭い方の角が前方に,前頭骨の両側半のあいだにあり,鈍い方の角がうしろに,左右の両頭頂骨のあいだにある.またこの泉門の側方の腕はほぼ直角に近いかどで限られている.この泉門は誕生のとき長径が平均2.15~3cmである.

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最終更新日13/02/03

 

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