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その結果わかったことは,ひとつづきの膜性頭蓋が軟骨化して,単一の軟骨性原始頭蓋knorpeliges Primordialkraniumが(膜性の頭蓋函に軟骨化がひろがる範囲に)できる.はなはだ多くの脊椎動物では,頭蓋底の最もうしろの所にだけ,時とともに少数の軟骨分節Chondromerenがみられ,これはついでそれ以外の軟骨性原殆頭蓋と融合するのである.しかしこのうに頭蓋後部に部分的な軟骨分節構造がみられるといっても,それは,分節構造のはなはだ明かな軟骨性脊柱に対する軟骨性原始頭蓋の鋭い対照を損うほどのものでない.

 つぎに頭蓋はさらに内臓骨格splanqhnisches Skeletをもっている.臓弓性骨格の軟骨弓Knorpelbögen des Visceralskelets(鰓弓)の数から,逆にそれに属すべき脊椎の数を推定できると考える人があるに違いない.しかし総弓の分節構造の問題はそれ自体がごくむつかしいのである.軟骨性の鰓弓は肋骨に相当するものではなくて,全く別の骨格部分である.軟骨性の鰓弓を肋骨と同系の分節構造の中に置いて考えることはできなくはないが,絶対にそうだと言いきることはできない.生ずる鰓弓の数は,頭蓋の椎体というべきものが軟骨性原始頭蓋の中で潜在性または顕在性に含まれている数よりも,少数のこともあり多数のこともある.

 頭蓋に潜在する脊椎を決定するために脳神経を利用する試みもやはり同じことで,神経分節構造Neuromerie merieは頭蓋の脊椎分節よりも,いっそうむつかしい問題なのである.未解決のことを利用して他の問題を解決しようとするのは危険千万である.

 さてこんなわけで,鰓弓の分節構造も神経のそれも,問題の解決に制限つきでしか利用できないとすれば,膜性頭蓋を生ぜしめる細胞群を探求するより仕方がない.ところが先ず第一に,頭蓋における中胚葉性分節の数が,頭蓋に想定される脊椎の数を決めることは明かである.何となればこれらの中胚葉分節が頭蓋を造りだすのだから.サメの胎児の頭では中胚葉性分節は9個以上見いだされた.それに続く脊椎動物の各網では,これがどうなっているか今のところ確定されていない.

 なぜ軟骨性の原始頭蓋に分節化が起らなかったり,起るとしても脊柱との境のところにだけ現われるかというわけは,容易に洞察することができる.それは脳というものに適応して起る現象で,頭の筋原基の発達が悪いことにもよるのである.

 最後に原始頭蓋が骨化しはじめると,その骨化点はおそらく中胚葉分節と同じ列び方で,また同じ数だけあることが考えられるが,それより多いことも少いこともあり得るのである.つまり骨分節講造Osteomerieは頭蓋に潜在する分節の数を確定するための材料とはならないのである.骨核の数は何よりも頭蓋の成長状態によって左右されるのであって,必ずしも潜在性の脊椎原基によって定まるのではない.以上述べたことから次のように結論される.頭蓋の膜性の脊椎原基の数は膜性頭蓋の形成にあずかる中胚葉分節の数と同じである.また頭蓋に実在する軟骨性脊椎は,頭蓋底の後部に形成される軟骨分節と同数だけしかない.最後に頭蓋における骨性脊椎の存在は,要するに疑問である.

 Veit, O., Über das Problem Wirbeltierkopf.102 S., 42 Taf. mit 150 Abb. Thomas. Verlag, Kempen-Niederrhein 1947.

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最終更新日13/02/03

 

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