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c)関節円板Disci articulares, Zwischenscheibenと関節半月Menisci articulares:

 膠原線維の束または線維軟骨でできた固い線維性の構造物である.関節包と結合し,両関節面のあいだにはいりこんでいる.そして関節円板の場合には関節腔を2つの室に分離し,関節半月の場合には関節腔内へ或る距離だけ,次第にうすくなりながら伸び出している.従って関節半月の横断面はクサビ状である.

 関節円板の意義は第1に,その構造が激しい衝突力を柔らげるので,緩衝物としてはたらくことである.また関節円板は一種の移動できる関節面をなしているのであって,これは人においても手術で除去したのちにふたたび新たに形成され得るのである(F. E. Stieve, Z. rnikr.-anat. Forsch., 46. Bd.,1939),関節円板は関節腔をほぼ完全に分離した2つの室に分けるので,実地医学で重要なものとなる.しかし関節の機構に対してこの装置が決定的な影響をもつという場所はない.

 d)関節唇Labia articularia, Pfannenlippenもまた散在性の軟骨細胞をまじえた線維性の固い結合組織からなり,輪状の高まりをなして関節窩の壁のつづきをつくっている(肩関節・股関節など).軟骨や骨の縁から幅のひろい底をもって起り,先の方にゆくほど薄くなってとがっている.

 e)連通滑液包kommunizierende Schleimbetitel(滑液包および滑液鞘Bursae et Vaginae synoviales)は膝関節・肩関節などのいくつかの関節に存在している.

 壁のうすい大小さまざまのふくろで,その内面は平滑で関節包の滑膜層のつづきで被われ,滑液によってぬれてツルツルしている.これらは腱または筋のすべりをよくするのに役だっている.その存在する場所を知ることは実地の医学で大きい意味がある.何となればそこは関節の中でもある程度弱い場所であって,関節腔内の液体が増加するさい.その圧力に最もたやすく屈する可能性があるからである.

2.可動結合の分類

 軟骨で被われた関節端が相接して滑るには,両関節面が規則正しい形をしていなければならない.両関節面の形はぴったり合っていることもあり,そうでないこともある.合っていない場合には,滑膜ヒダとか円板とか半月とかが関節腔にはいりこんで,両関節面の形の不相応をなくするか,あるいは少くしているのが普通である.相対する関節面が大きさを異にすることは非常にしばしばである.

 関節面は平面のこともあり,回転体の表面の一部をなしていることもあり,またもっと複雑な形のこともある.平面関節面は無限大の半径をもっと考えることによって,回転体の群に属させることができる.

 回転体の表面は,直線または任意の単純曲線が,それと同一平面内にある1つの軸を中心にして回転することによって生じると考えられる面である.

 回転する線が直線で回転軸に平行なときには円柱が生じ,直線であって回転軸に平行でないときには円錐が生じる.また回転する線が半円形で,軸がその直径である場合には球ができる.回転する線が円弧で,軸がその凸側にあるときには鞍型の関節面ができ,軸が凹側にあるときは「ビール樽型」が生じる.また楕円がその軸の1つを中心にしてまわると,回転楕円体ができる等々である(R. Fick, Handbuch, II. Teil).

 もちろん胎児のときに関節面はこんな風にして生じるのではなく,相接する軟骨または骨化しつつある骨格部分のあいだを埋めている軟かい組織に,その骨格部分に対して横の方向に隙間ができて,これがのちの関節腔のはじめなのである.すでにこの隙間ができる前に軟骨端にはのちの形態一すなわち後に各関節の特徴となる円蓋面・陥凹面・平面などの形態--の原型が認められる.そのさい筋の停止に近い関節端は関節窩に改造され,筋の停止から遠い関節端は関節頭となるのが二普通である(R. Fick, Verh. anat. Ges.1928).--S. Krompecher und K. Goerttler, Die Grundlagen einer experimentellen Gelenkbildung. Verh. anat. Ges. Anat. Anz. 87. Bd.,1939.

 出来上がった関節はHermann Meyerに従って次のように分類される.

 1. 形によって次のものが区別される:平面関節・球関節・卵形関節・鞍関節・円柱関節・ラセン関節・円錐関節・混合関節.

 2. 回転軸によって:1軸関節・2軸関節・3軸関節および多軸関節が区別される.

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最終更新日13/02/03

 

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