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4. 棘[突]上靱帯Ligamentum supraspinale (図383,385,400).

 この靱帯は棘突起の尖端をたがいに結合する強固な縦走線維束からなる.棘突起の尖端の上をこえて伸びているので,第7頚椎から仙骨まで一体をなしている.

 頚部では棘上靱帯のかわりにきれいに交錯した線維束の集りである項中隔Septum nuchae, Nackenbandが存在する(図386).項中隔は両側の筋群を分ける三角形のうすい中隔であって,弾性線維と膠原線維からなり,第7頚椎の棘突起から外後頭隆起にまで張られている.項中隔は上にゆくほど前後幅を増して外後頭稜の全体に付着する.各棘突起から強力な線維束が項中隔の全体の線維塊のなかに放射状にだされている.

 動物では項中隔がほとんど純粋に弾性組織性であり,膠原線維を非常に多く含むヒトの項中隔よりずっと強くできている.

5. 横突間靱帯Ligamenta intertransversaria:

 各横突起間の線維性の結合で,全体として発達が弱い.

 腰部ではかなり厚い膜をなし,胸部では筋肉と密接な関係をもつ細い線維束からなり,頚部ではわずかな線維から威つている(図400).

 最下の仙椎の横突起(外側部)は第1尾椎の横突起と外側仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum lateraleによって結合されている(図384).この靱帯の骨化は第1尾椎の仙骨への同化の現われの一部である.

6. 椎間関節の関節包Capsulae articulares articulorum intervertebralium.

 関節突起の縁から起って,両関節面のあいだにある関節腔を包むものである(図385,397,398,401,403).脊柱の頚部では胸部や腰部よりこの関節包がゆるくて広い.

 仙骨角と尾骨角とは仙尾関節靱帯Ligg. sacrococcygica articulariaによって結ばれている.尾骨の横突起と仙骨の外側部とのあいだには外側仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum laterale(図384)がある.

2.脊柱全体の靱帯

I. 前縦靱帯Ligamentum longitudinale commune ventrale

 この靱帯(図393,395)は椎体の前面にあって,後頭骨の体と環椎の前結節から起り,第1仙椎まで伸びており,下にゆくほど幅を増して強大になる.一番深くにある線維は隣りあう脊椎どうしを結ぶだけであるが,表層の部分は4~5個の脊椎をまたいで伸びている.この靱帯と椎体との結合は強固であるが(Poirier, Fick),椎間円板とはあまりしっかり結合せずに,その上をとび越えている.--椎体の側面にもこれに相当する何本かの線維束が細いパラパラの束をなして,隣りあう脊椎どうしを結んでいる. 前縦靱帯は仙骨の第2仙椎の前面で骨膜と結合して一旦終り,仙尾結合にいたってまた前仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum ventraleとして現れる.しかし前縦靱帯が仙骨の全長を走ることも時どきある.

II. 後縦靱帯Ligarnentum longitudinale commune dorsale

 この靱帯(図392,394)は脊柱管の前壁, すなわち椎体の後面に接しており,前縦靱帯より弱い.そして上部では下部よりも幅が広い.頭蓋腔内で後頭骨の体から起り,仙骨にまで伸びている.頚部では幅が一様であるが,これに反して胸部と腰部では椎間円板のところで幅を増し,椎体の中央のところで幅がせまくなっている.この靱帯は椎体の縁および椎間円板とは固く結合しているが,椎体の中央部ではこの靱帯の下に著しい隙間があって,そこはとくに静脈叢によって占められている.

 仙骨と尾骨のあいだでは深後仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum dorsale profundumがこの靱帯のつづぎとしてみられる.深後仙尾靱帯は痕跡的な椎弓に相当する浅後仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum dorsale superficialeという線維束で被われている.

 最後の尾椎から皮膚へ尾骨皮膚支帯Retinaculum caudale cutisという線維索が走り,そのために皮膚に尾骨窩Foveola coccygicaと呼ばれるくぼみができていることが稀でない.

 脊椎の靱帯と椎間関節に分布する血管および神経:多数の小血管が椎骨動脈ならびに肋間動脈・腰動脈・仙骨動脈から来ている.神経は脊髄神経から来る.

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最終更新日13/02/03

 

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