Band1.266   

脊柱の力学(図387391)

a) 脊柱の節構造

 脊柱は骨と靱帯で構成された一種の"不動結合性連鎖synarthrotische Kette"(R. Fick)ともいうべきものである.脊柱にはそれぞれの使命をもった一連の椎体すなわち椎体柱Wirbelkörpersäuleと一連の椎弓すなわち稚弓板Bogenplatteとが区別される.両者とも靱帯装置をもっており,前者は節のある1本の柱,後者は節のある1枚の板をなしている.椎体柱は体重を支える役目をなし,また椎間円板によって運動の大きさに対して決定権をもつ.これに対して椎弓板は運動の軌道と方向を決定するのである.そして両者がたがいに制限し合っている.

 仙骨は寛骨とかたく結合して骨盤をなしているので運動不能である.上位24個の脊椎も多数の靱帯結合によってその可動性が大いに制限されているので,隣りあう脊椎の相互間ではごくわずかしか動き得ない.しかしそれぞれではごくわずかな運動でも,それが24も集ると,脊柱全体の大きなはたらきが可能となるのである.

[図387] 脊柱の節構造の模型図

[図388] 脊柱の太さの増減

[図389] 固定されたテコとバネ装置 a固定台,hテコの腕,fまげられたバネ,pとp’荷重.

[図390] ヒトの脊柱と正中面上でのその弯曲を示す模型図(h背方, v腹方)直立位で環椎の前結節aを通る鉛直線 vは,第7頚椎 b,第9胸椎c,第3仙椎の屈曲部d,尾骨の尖端 eを通る.p岬角, s恥骨結合,1,2,3はそれぞれ頚,胸,腰部弯曲(腰 部弯曲は cまで達しない),4仙尾骨弯曲,h水平線,n規準結合線(すなわち恥骨結合上縁のうちがわと第3仙椎の中央とを結ぶ線),30°規準結合線が水平線となす傾角.

 脊柱の運動はすべてのがわへ可能であるが,主要運動は次のものである.

1. 正中面内での屈曲と伸展(前屈Anteflexionと後屈Retrroflexion)

2. 前額面内での屈曲と伸展(側屈Laterallflexion〉

3. 回旋運動(捩転Torsionと逆の方向への捩転,Retorsion)

4. バネ運動一脊柱が弯曲しているためにこれが可能である.

 これらの運動の大きさは脊柱の各部分によって異なり,また死体では生体におけるよりも大きく,さらに個人的に大きい差がある.

S.266   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る