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 a)前環[][]関節Art. atlantodentalis ventralis:この関節をつくる環椎と軸椎歯突起の両関節面は,1つの円柱面から切りとられた楕円形の部分に当る.環椎の歯突起関節面では,大多数の例で楕円の長軸が横になっているのに対して,軸椎歯突起の前,関節面では長軸が上下に向いている.これらの関節面を被う軟骨はたいてい線維軟骨性で,純硝子軟骨性ではないようである(Fick).

 その関節包は繊細で1つの溝に固定されている.関節腔は環椎の関節面よりも上方および下方へ少しはり出している.この関節腔は側方へは近隣の諸関節すなわち環椎後頭関節・後環歯関節・外側環軸関節のすぐそばにまで達している.

 b)後環[][]関節:両関節面のうち軸椎歯突起の後関節面は非常にまちまちな形をしている.この関節面は横または縦の卵円形,あるいは円形,時には溝状のことさえある.この関節面は歯突起の下部にあり,その弯曲はたいてい鞍状であって,左右方向に凸,上下方向に凹である.0.3~1mmの厚さの線維軟骨で被われている.一方Fickによれば環椎横靱帯のもつ関節面は,大きさ・形・組織学的性質ともに,いま述べた歯突起の後関節面に相応している.

 関節包は非常に弱い.歯突起の関節面の軟骨縁のすぐきわに付いているが,環椎横靱帯に付くところでは歯突起の右と左にある滑液包に移行し,この滑液包はさらに前環歯関節や外側環軸関節≧つながっていることがある(Fick).

 c)外側環軸関節Artt. atlantoepistrophici laterales:関節面どうしがよく合致していない.左右の関節面はおよそ同一の円錐面の一部とみなされ,その軸は軸椎の歯突起を垂直に貫くのである.1/2~2mmの厚さの軟骨で被われている.関節包は非常に塔くゆるやかで,前内側だけは軟骨縁のすぐきわに付いているが,その他のすべての場所ではかなり離れたところから起っている.

頭蓋と脊柱の結合の力学
1. 環椎後頭関節(第1頭関節)

 この関節は解剖学的には左右の両関節に分離しているが,すでに述べたように,これら左右の関節面は長軸を横にした同一の回転楕円体の表面に含まれる.つまり両者は力学的な意味では単一の関節なのである.形による分類では楕円関節に属し,無限に多くの軸のまわりに回転可能である.しかし次の2つの主要運動が区別される.うなづく運動Nickbewegungen(前屈と後屈)はほぼ頚静脈結節の高さを左右に走る軸を中心とする運動であり,頭をかしげる運動Seitbeugung(側屈)の回転軸はそれより上方にあって,上述の軸とは別の矢状軸であり,これは正中面上を上前方から後下方へ斜めに走っている.

2. 環軸関節(第2頭関節)

 この関節は軸椎の歯突起の中央を上下に貫く軸をもつ回旋関節である.ここでは主として頭の回旋運動が行われるが,この関節はまたうなずく運動と頭をかしげる運動にもわずかに関与している.

 この関節に属する関節面は8つあって,それは軸椎の側方にある2組と,歯突起の前面と後面にあるものと,これに対応する環椎と環椎横靱帯の関節面である.しかしこれらは力学的塗意味では単一の関節をなすのであって,軸に対して凸側を向けて弯曲した母線をもつ円錐形の関節なのである.

 回旋の範囲は中央の位置から者側へ30°である.外側環軸関節は左右とも,両接触面がふくらんだ弯曲をもっているので,頭を中央に向けたときには前後にすきまがあいている.このことから回旋運動に当って同時に一種のラセン運動が行われなければならないということが結論される(Henke, R. Fick).このラセン道はかなり傾斜が急なので(ネジの歩みが約3cm),30°の回旋において,同時に頭が1/12=2.5mm上昇または下降することになる.垂直軸を中心とする頭の回旋に当って,環椎は頭蓋の関節円板ともいうべきものとして働いている.脊柱管の内容は歯突起をとりまく諸靱帯,とくに翼状靱帯・環椎横靱帯・蓋膜によって,歯突起から守られている.

 前後に屈曲する蓮動の大きさはH. Virchow(Arch. Anat. Phys.1909)がしらべた1例では28°である.そのうち20.5°は第1頭関節, 7.5°は第2頭関節の分である.

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最終更新日13/02/03

 

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