Band1.289   

a)肘関節橈尺部Pars radioulnaris articuli cubiti(図416418,423,425)

 この関節をつくっている骨は尺骨と続骨である.

 関節面橈骨の関節環状面Circumferentia articularis radiiと尺骨の橈骨切痕Incisura radialis ulnaeである.

 尺骨の橈骨切痕の輪郭は,凸側を下方に向けた三日月の形をしている.この切痕の面は橈側に凹を向けて12~15mmの直径をもつ円柱面の,中心角60~90°の部分に相当している.しかしFickのさらにくわしい研究によれば,この面は円錐面という方が正しいという.軟骨の被いは中央部で最も厚く,前方と後方で著しく薄くなっている.橈骨の関節環状面は橈骨小頭の上部のまわりにある.この面は尺骨の橈骨切痕に接して滑るだけでなく,また橈骨輪状靱帯(後述)の内面にも抱かれて滑る.関節環状面の“関節部Gelenkteil”すなわち尺骨の切痕の中で滑る部分は,全周の1/31/2に当っている.この部分は最も幅ひろい(高い)ところで4~6mmの幅があり,それより前方および後方で幅がせまく(低く)なっている.

 関節包関節腔については肘関節の項(292頁)をみられたい.

 特別の装置としては幅(高さ)1cmほどの強力な橈骨輪状靱帯Lig. anulare radiiがある.

 これは尺骨の橈骨切痕の前後両縁に付いて,全円周の4/5をなしている.その形はロウト状で,下方のつぼんだ方の口が橈骨頚を包んでいる.内面にはしばしば薄い軟骨層がある (Fick).

b)下橈尺関節Articulus radioulnaris distalis (図417,432)

 この関節をつくっている骨は椀骨と尺骨である.

 関節面尺骨の関節環状面Circumferentia articularis ulnaeと橈骨の尺骨切痕Incisura ulnaris radiiである.それになお関節円板の上面と,尺骨小頭の下端の軟骨で被われた部分が加わっている.

 橈骨の尺骨切痕は上に述べた尺骨の橈骨切痕と非常によく似ている.すなわちこれも同様に半月形の輪郭をもち,直径2.6 ~3.5 cmの円柱面の,中心角45~70°の部分に当っている.その軟骨は2mmの厚さである.尺骨の関節環状面は鎌形をして,尺骨小頭の全周の半分を占めるにすぎない.この面は中央で幅(高さ)が1cmあり,掌側および背側へゆくほど狭く(低く)なる.この面は下方で,尺骨小頭の下面を茎状突起の基部まで被う半月形の関節面に移行している.そしてその移行部は大きさのまちまちな角をなして,多少とも鋭い稜が形成されている(図432).両関節面における軟骨の厚さは約1.5mmで,深層は硝子軟骨性, 表層は線維軟骨性である.

 関節包はゆるやかで広い.これは関節面の側縁と関節円板とに付いている.この関節包の一部が上方へ折れかえって,広いゆきづまりのふくろが伸びでている.これを嚢状陥凹Recessus sacciformisという.関節腔は広くて,多少とも滑膜ヒダや滑膜絨毛をもっている.

 この関節腔は,橈骨切痕の下縁に密接して関節円板の起始部にある狭い裂隙によ1つて,橈骨手根関節と通じていることが非常に多い.また年をとった人では関節円板の中央にかなり大きい穴があいていることがよくある.

特別の装置としてはすでに何度も言及した関節円板Discus articularisを挙げねばならない.

 これは三角形の結合組織板で,その橈側部と尺側部では線維軟骨性である.橈骨の尺骨切痕の下縁から起り,尺骨の茎状突起の基部と,そこに存在するくぼみとに付着する.この円板が下橈尺関節と橈骨手根関節とを分離している.

 血管は掌側および背側骨間動脈と,背側および掌側手根動脈網からくる.神経は掌側および背側前腕骨間神経からくる.

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最終更新日13/02/03

 

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