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 関節包は肘関節としてひとまとまりをなす3つの関節に共通であって,掌側では背側よりも強い.関節包は中くらいの屈曲位のときは,掌側でも背側でもゆるんでいる.完全な屈曲のときには関節包の背側半が緊張し,完全な伸展のときには掌側半が緊張する.橈骨輪状靱帯より下方へ関節包が伸びだしている部分は嚢状陥凹Recessus sacciformisとよばれる.

 関節包は掌側では上腕骨の烏口窩と橈骨窩との上方1/2 mmのところから起り,尺側および橈側上顆は関節包の外に取り残されている.そのさい滑車の内側縁に沿って約2mmの距離をおいて付着し,また小頭の外側および背側の軟骨縁にはそのすぐきわに付き,背側では肘頭窩の中央に付着している.尺骨においても軟骨縁に沿って付着するが,肘頭と烏口突起のところでは軟骨縁からさらに多少はなれたところに付いている.橈骨では上端から約15mm下方で頚に付着しており,この部分は関節包が繊細でうすく,また橈骨輪状靱帯の下方には上述の嚢状陥凹をつくっている.

[図427]右の肘関節 尺側からみる(4/5)

 関節腔の形は非常に複雑である.関節包の内部に存在して,しかも軟骨で被われていない骨部(主として肘頭窩・烏口窩・橈骨窩・橈骨頚など)はすべて関節包の滑膜層で被われている.関節腔のくぼみの奥には結合組織や脂肪組織がある.多数のひだが関節包から出て,一方の関節面の縁と他方の関節面の縁との間にはいりこんでいる.そのうち最も著しいものは上腕骨小頭と橈骨小頭とのあいだにあるもので,これは関節円板と比較し得るほどのもので,幅は2~3mmあり,完全な輪のほぼ3/4に当っている.

 特別の装置としては3つの補強靱帯があるただしこれは関節包および焼側側副靱帯と結合して分離できない橈骨輪状靱帯Lig. anulare radiiをもいっしょに算えてのことである.他の2つの補強靱帯が尺側および橈側側副靱帯である.尺側側副靱帯Lig. collaterale ulnareは上腕骨の尺側上顆から起って,その線維は扇状に尺骨に向って放散している.

 橈側側副靱帯Lig. collaterale radialeは橈側上顆の掌側面および下面から起って,2つのたがいに離開する束に分れ,橈骨小頭の掌側および背側をへて,尺骨の橈骨切痕の掌側縁と背側縁にいたる.この靱帯は続骨輪状靱帯の輪走線維ならびに前腕の表層の伸筋の起始腱と密に癒合している.橈骨輪状靱帯については前述の肘関節の続尺部の項(289頁)を見られたい.

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最終更新日13/02/03

 

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