Band1.297   

 前腕の関節面は1つの浅い卵円形の関節窩をなし,その長軸は横の方向にあって4~5cm, 短軸は1.5~2cmである.曲率半径は橈尺方向で4cm, 背掌方向で約2cmである.また橈尺方向(横の方向)の弯曲は中心角約70°,背掌方向(前後の方向)のそれは関節面の中央で中心角約65.の孤に相当している.橈骨の手根関節面は1つの隆線によって2つの小面に分けられており,その1つは舟状骨に,他は月状骨に対応する(図424).軟骨の厚さは各場所によって非常にまちまちである(0.8~1,15mm).この関節窩に接して関節頭として滑り動くのは舟状骨・月状骨・三角骨の近位面であって,これらの面はゆるやかな骨間手根間靱帯Ligg. intercarpica interossea(この靱帯は線維軟骨で被われる)によって結合されている.軟骨の厚さは舟状骨では0.8mm,月状骨では1.1 mm,三角骨ではたった0.2mmである.三角骨の関節面の状態と,それがどの程度に関節形成に与かるかは,大いに変化に富んでいる.関節頭は横の方向(橈尺方向)の弯曲が関節窩のそれよりも強くて,曲率半径は3cm,中心角約110°の孤に相当している.背掌方向の弯曲とその中心角は3つの手根骨でそれぞれ異なっている.

関節包はひろくて薄く,この関節における骨と軟骨の境界のすべてに密接して起っている.関節腔はしばしば下橈尺関節および手根間関節とつながっている.手根間関節とは舟状骨と月状骨のあいだの隙間によって通じていることが多い.さらに豆状骨関節との結合もしばしば見られる.滑膜ヒダの数と大きさは非常にまちまちである.

 特別の装置としては背側に1つ,掌側に2つの補強靱帯がある.すなわち背側橈骨手根靱帯Lig. radiocarpicum dorsaleは橈骨から起って斜めに遠位尺側方に走り,三角骨の背面に付く.また掌側橈骨手根靱帯Lig. radiocarpicum volareは前者よりはるかに強い靱帯で,橈骨の茎状突起と税骨の遠位縁から起る.この靱帯は幅のひろい隙間によっていくつもの部分に分れており,それらが斜めに遠位尺側方へ走って,月状骨・三角骨ならびに有頭骨・有鈎骨に付藩している.最後に堂側尺骨手根靱帯Lig. ulnocarpicum volareは尺骨の茎状突起の基部と,関節円板の掌側縁から起り,三角骨と月状骨に付く(図430).

 この関節の血管は背側および掌側手根動静脈網からくる.神経は正中神経の掌側前腕骨間神経と,尺骨神経の深枝からくるほか,さらに橈骨神経の背側前腕骨間神経と尺骨神経の手背枝からもきている.

b)手根間関節Articulus intercarpicus(遠位手関節distales Handgelenk)

 この関節をつくる骨は骨間手根間靱帯によって結合される近位列の手根骨(豆状骨を除く)と,同じく骨間靱帯によって結合される遠位列の手根骨である.

 関節面は舟状骨・月状骨・三角骨の遠位関節面と,大多角骨・小多角骨・有頭骨・有鈎骨の近位関節面である.

 近位列の手根骨の関節面は横の方向に波状を呈し,その波状弯曲はまず橈側1/3の部分では凸で,中央ほぼ2/3の部分は深く陥凹し,尺側の一番はしの部分はまた凸になっている.背掌方向での弯曲はそれぞれの骨ではなはだ異なっている,軟骨の厚さもまた非常にまちまちである(詳しくはWerner)を参照されたい)(Werner, H. :Die Dicke der menschIichen GeIenkknorpel, Inaugural-Dissertation Berlin 1897. (原著註)),遠位列の関節面は近位列のそれとは逆の弯曲を示していて,大小の多角骨は凹面をもって舟状骨の凸面に対している.また有頭骨と有鈎骨によって,近位方へ強く突出する関節頭がつくられて,これが舟状骨・月状骨・三角骨によってつくられる深い関節窩にはまっている.この関節頭は深く掌側へ, 月状骨および三角骨の下へはいり込んでいる.それぞれの骨の面の弯曲は非常にまちまちで,軟骨の厚さも不定である(くわしくはFickおよびWernerを参照されたい).

 関節包は関節軟骨の縁に沿って付いており,背側で弛緩し,掌側で緊張している.

 関節腔は陥凹に富み,しばしば(月状骨と舟状骨のあいだの隙間にょって)橈骨手根関節に通じ,また総手根中手関節ともつながっている.滑膜襞は多数みとめられる.横走する大ぎなひだが背側壁と掌側壁とに1つずつ存在する.

S.297   

最終更新日13/02/03

 

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