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 基節骨と中節骨の遠位端の関節面は,上腕骨滑車に似た滑車をなしている.一方中節骨と末節骨の底にあってこれに対応する面は浅い関節窩をなし,そこに1本の導隆線がある(図429, 431)

 関節包は関節窩では軟骨縁のすぐきわに付き,滑車では軟骨縁よりいくらかはなれて付いている.特別の装置としては強い側副靱帯Ligg. collateraliaがある.

 これは滑車の側面でやや背側方にあるくぼみから起って,斜めに掌側遠位方へ伸びて,相当する指節骨の底につく.関節包の背側壁は伸筋の背側腱膜とかたく結合している.掌側壁は中手指節関節のものと似た線維塊をふくんでいる.

 血管神経は近隣の指動静脈ならびに同神経からくる.

 指関節の力学:人体中でもっとも純粋な蝶番関節であって,ここで可能な運動は掌屈と背屈(屈曲と伸展)である.これらの運動は滑車の弯曲の軸を中心にして行われるのである.

VI.下肢骨の連結Juncturae ossium extremitatis pelvinae

1.下肢帯骨の連結Juncturae ossium cinguli extrelnitatum pelvinarum

 下肢帯には固有の靱帯結合というものはただ1つ,寛骨の閉鎖膜Membrana obturansがあるだけである.

 左右の寛骨は前方で恥骨結合Symphysis ossium pubisという線維軟骨結合によって連ねられている.また背方では胴の骨(正確には脊柱)との結合がある.すなわち仙腸関節Articulus sacroilicusおよび多数の靱帯によって仙骨・尾骨ならびに腰部脊柱と結びつけられている.

a) 寛骨の固有の靱帯結合
α)閉鎖膜Membrana obturans(図434, 435, 438, 440)

 閉鎖膜は閉鎖孔Foramen obturatumを前上方のすきま1つを残してとざしている.このすきまは恥骨枝の寛骨臼部の閉鎖溝Sulcus obturatoriusとともに閉鎖管Canalis obturatoriusをつくっている.

 閉鎖膜は前方および後方では閉鎖孔を境する鋭い縁から起り,上方では閉鎖稜から,下方では坐骨の後面から起っている.線維束はいろいろな方向に交叉しあっているが,全体としてみると横に走るものが多い.閉鎖膜の上部は閉鎖稜から起って,閉鎖管の底をなす.閉鎖膜はところどころに脂肪組織で埋められた大小さまざまの穴があり,また特に強い線維束がいくつかあって,その大部分は寛骨臼切痕の近くの小さい高まりから起って,前方へ扇状に放散するとともに,次第にうすく細くなる.

b) 左右両寛骨間の結合
α)恥骨結合Symphysis ossium pubis, Schamfuge(図433)

 恥骨結合によってたがいに結合されている骨は左右の寛骨,もっとくわしくいえば左と右の恥骨である.

 たがいに結合している面は左右の恥骨の恥骨結合面Facies symphyseosである.

 この面はやや凸をなし,たがいに向きあう両結合面の間隔は,上部より下部で大きくなっている.

 恥骨間[線維軟骨]Lamina fibrocartilaginea interpubicaが向きあう両面のあいだを埋めている.

 恥骨間板は骨のきわでは2~3mmの厚さの硝子軟骨でできており,内部は"zentrale Zwischenscheibe", Fick(中心恥骨間円板)といわれる線維軟骨でできていて,その中には常に恥骨結合腔Cavum symphyseos, Fickという腔所がある(Fick, Anat. Anz.,19. Bd.,1901).子供では(硝子)軟骨層の方がよく発達しているが,成人では中心恥骨間円板の方がよく発達している.

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最終更新日13/02/03

 

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