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 腸腰靱帯Lig. iliolumbaleは第4・第5腰椎の肋骨突起から出て腸骨稜と,腸骨の前後面のこれに隣接する部分へ放散している.仙結節靱帯Lig. sacrotuberaleは扇状をなしており,坐骨結節の内面に付き,仙骨と尾骨の側縁から起っている.上方では下および上後腸骨棘にまで達している.

 この靱帯に属する1つの線維束が坐骨結節から坐骨枝の恥骨部に沿って前方に走る.これを鎌状突起Processus falciformis(図434)とよび,閉鎖筋膜がこれとつながっている.仙棘靱帯Lig. sacrospinaleは仙結節靱帯より短くて細く,一部は仙結節靱帯の前にかざなってこれと結合している.起始束は仙結節靱帯と同じく仙骨と尾骨の側縁につくが,細くなった付着束は坐骨棘に付くのである.

 仙結節靱帯と仙棘靱帯とたようて,および小坐骨切痕からおよび小坐骨孔Foramen ischiadicum majus, minusという2つの孔が形成される.大坐骨孔を貫いて梨状筋が走るので,この孔のうち上部と下部とだけが残ることになり,それぞれ梨状筋上孔Foramen suprapiriformeおよび梨状筋下孔Foramen infrapiriformeという.梨状筋上孔を通るものは上臀動静脈および同神経,梨状筋下孔を通るものは下臀動静脈および同神経・坐骨神経・後大腿皮神経・内陰部動静脈・陰部神経である.そのうち内陰部動静脈と陰部神経は仙棘靱帯の外面に沿って小坐骨孔を通り,坐骨直腸窩にはいる.なおそのほかに小坐骨孔を通るものとして内閉鎖筋がある.

 仙腸関節はほとんど可動性のない結合様式であって,不動結合と可動結合のどちらともつかず,機能的には恥骨結合と同じような働らきをするのである.

 仙腸関節の血管は内腸骨動静脈から,神経は近隣のすべての幹から来ている.

 下肢帯の静および動力学:下肢帯嫁仙骨と結合して骨盤をつくる.骨盤は完全に閉じた環をなしているから,建築でいう環状円蓋または筒形円蓋Voll-od. Tonnengewölbeと見ることができる.あるいはまた単純な円蓋が,大腿骨頭の上にのっているとも見られる.そして円蓋の両脚は合一した左右の恥骨によってつながれており,円蓋に荷重のかかつたとき円蓋の両脚が横へ開かないようになっている.仙骨は上方からかかつくる体重を受けねばならないので,この円蓋の要石をなしている.

 しかしこの要石は図436にみるように,背側よりも腹側で幅がひろくなっていて,普通の要石とは趣きを異にするのである.従ってそれだけのことなら,仙骨は自らが受ける圧力を円蓋の側壁へと伝達することができないわけである.ところがこの伝達は,仙骨の骨盤への固定のしかたによって,実に巧妙に果されている.仙腸関節の関節包だけでは,この目的を果すにはあまりにも弱体であろう.ところが仙腸結合の背側壁には骨間仙腸靱帯として上述した,あの強大な靱帯群があって,これによって仙骨は左冶の寛骨のあいだに上からつられているのである.そこで仙骨に上方から圧力がかかると,ただちに骨間仙腸靱帯が緊張し,腸骨の背側部(b)が内側へひき寄せられる.そうすると仙骨は左右の寛骨のあいだにはさまれ,しかも荷重が大きければ大きいほど強くしめつけられるのである.こんなわけで,この一風変つた形の要石が結合を有効にするうまい仕組みになっているのである.なお恥骨結合にお炉ては,荷重のかかるさいにその各靱帯が緊張して,円蓋の両脚が横にひらこうとする力に対抗する.

[図436] 骨盤の組みたてを示す模型図  b腸骨の背側縁,ここに骨間仙腸靱帯が付いている.s 恥骨結合.(H. Meyerによる)

2. 自由下肢骨の結合Juncturae ossium extremitatis pelvinae liberae

1. 股関節Articulus coxae, Hüftgelenk (図435438, 440443)

 この関節をつくっている骨は寛骨と大腿骨である.

 関節面は大腿骨頭Caput femorisと月状面Facies lunataおよびそれを補う寛骨臼横靱帯Lig. transversum acetabuliと関節唇Labium articulareである.

 寛骨臼(図438)は球面の一部をなして,その中心角は170~180°,曲率半径は約2.5cmである.

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最終更新日13/02/03

 

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