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 膝蓋骨の関節面Facies articularis patellaeは人体のすべての関節面のうち最も厚い軟骨で被われている.いちばん厚いところ, すなわち中央の隆線のところで5.4~6, 4 mmの厚さがある.この隆線によって両側に分けられる面は内側(脛側)の面の方が大きくて,外側(腓側)の方が小さいことが多い.そしてこれら両関節面はさらに小さい7つの領域に分けられる.内側面の内側縁に接して1つの狭い領域があって脛側辺縁条tibialer Randstreifという.残りの6つのうち3つは外側の面に,他の3つは内側の面の残りの部分にある.すなわち両面とも1つずつの近位・中・遠位の領域がある.両面の遠位の領域は過伸展のとぎに大腿骨顆の膝蓋面が触れるところであり,両面の中央の主領域は普通の運動のときに膝蓋面の上を滑る.また両面め近位の領域と前述の脛側辺縁条には,膝蓋骨が趣度の屈曲のときにだけ触れる.

 関節包は前方と両側方では薄くゆるくて広いが,後方ではそれより強くなっている.関節包は多数の靱帯によって被われている.

関節包は大腿骨では軟骨縁から1/2~2cmへだたったところから起り,しかもその距りは一般に両側方および後方よりも前方で大きFくなっている.大腿骨の両上顆は関節包の外にある.関節包は脛骨には軟骨縁からごくわずかへだたったところに付いている.膝蓋骨は関節包の前壁の中にはまりこんでいる.そして関節包は膝蓋骨の底では軟骨縁から数ミリメートル離れたところに付くが,ほかのすべての縁では軟骨縁のすぐそばに付いている.後壁は丈夫で孔がたくさんにあり,脂肪組織でみたされて血管の通りぬけるところになっている.

 関節腔は全身の関節中でもっとも広く,その構造が最も複雑である.滑膜層を後上部のはじまりから追つてゆくと,そこから交叉靱帯の上および脛骨にまでたどることができる.脛骨と膝蓋骨のあいだでは,滑膜層は膝脂肪体Corpus adiposum genusという,関節腔に突出した幅のひろい脂肪隆起を被っている.膝脂肪体の表面には膝蓋骨の両側縁から2つのひだが来ており,これを翼状ヒダPlicae alaresという.脂肪隆起の中央から前交叉靱帯へと関節腔を貫いて,滑膜だけでできた1本の索が走っている.これが膝蓋滑膜ヒダPlica synovialis patellaris(図450)で,その太さはさまざまであり,しばしば非常に細いものである.

 特別の装置が膝関節にはたくさんある.a) 関節包の前面・側面および後面の補強靱帯,b)骨間靱帯,c)関節半月,d)連通滑液包

a)関節包の補強靱帯

 1. 前面では大腿部の大きな伸筋である大腿四頭筋の腱の下部が補強靱帯の役目をしている.この部分は膝蓋靱帯Lig. patellaeとよばれて,膝蓋骨の尖から起り,上部では幅3cm,厚さ3~8mmあるが,脛骨粗面へ付くところでは細くなり,幅が2~2.5cmになっている.この靱帯の両側縁は大腿筋膜Fascia lataと癒合している.

 2. ,3. 脛側および腓側膝蓋支帯Retinacula patellae tibiale, fibulare(図446, 447)は膝蓋骨および膝蓋靱帯に平行して走っている.

 両支帯は大腿四頭筋の腱および膝蓋骨の底から起り,解剖のさいは大腿筋膜から多少とも容易に分離することができる.腓側膝蓋支帯は腸脛靱帯Tractus iliotibialisにつづいていて腸脛靱帯粗面Tuberositas tractus iliotibialisに付く.内側膝蓋支帯も脛骨につく.

 4. 内側側副靱帯Lig. collaterale tibiale(図446)は大腿骨の内側上顆から起って,脛骨の内側縁と後縁につく.

 この靱帯には前後の2部が区別され,前部の方が後部より長く,後部は内側半月の後縁までしか達していない.長い方の前部は半膜様筋の主停止部を被い,脛骨顆の下方で脛骨が急に細くなった部分を橋わたししているので,この靱帯の下にある組織をとり去ると,狭いすきまがみとめられる(図451).

 5. 腓側側副靱帯lig. collaterale fibulareは人体で最も独立性をもった側副靱帯といえるであろう.

 大腿骨の外側上顆から起り,腓骨小頭の外側縁につく.長さは5~7cm,太さは約6mmである.この靱帯と関節包とのあいだには,脂肪をふくむ疎性結合組織がある,この靱帯の上部の内側には膝窩筋の腱があり,下部の内外両側には大腿二頭筋の停止束が走っている(図447, 451).

 関節包の後面は両顆の上方で腓腹筋および足底筋の起始腱によって補強されている.特別の線維束としては次のものがある:

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最終更新日13/02/03

 

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