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 リンパ管は関節包の内側・後側・外側から出て(Baum. Anat. Anz., 67. Bd.,1927)膝窩リンパ節にいたり,そこからさらに深鼡径下リンパ節に達する.

 膝関節の力学:膝関節は一種の蝶番関節Ginglymusではあるが,なお大腿骨と脛骨の回旋運動もここで行われうることに注意すべきである,すなわち伸展の最終段階における強制的な回旋--終結回旋Schlußrotation(H. Virchow)と屈曲の最初の段階における強制的な回旋と,それから膝をまげた位置での自由な能動的な回旋とである.

 膝関節における屈曲と伸展は,大腿骨の両顆をほぼ横の方向に貫き下肢の構成軸Konstrzaktionsachseに直角に交わる回転軸を中心にして起る.すでに述べた回旋軸Kreiselungsachse(大腿骨頭の中央点と大腿骨の顆間窩を通る線)を,伸展した下肢で下方へ延長すると,脛骨の顆間隆起と腓骨躁とを通る.膝関節の屈曲面は回旋軸をふくみ,回転軸に垂直である.

 半月の本質的なはたらきは緩衝作用にある.

 大腿骨ならびに脛骨の終結回旋Schlußrotationは伸展の最終段階と強制的に結びついている.大腿骨が固定してい為ときは,脛骨の内側顆が腓側顆よりも前に出るので,脛骨が少しばかり外旋する.脛骨が固定しているときは,大腿骨の腓側顆は一杯に伸びきつた腓側側副靱帯によってひきとめられ,それ以上前へ回転することを妨げられるが,大腿骨の内側顆の方はさらに後方へ導かれる.こあ終結回旋のために上述の副関節面accessorische Gelenkflächeが存在するめである.終結回旋が終ると,下肢の各骨は単マの柱ともいうべき状態になり,終結回旋が逆の方向にもどされるまでは屈曲され得ない.つまり終結回旋は伸展に対してはこれを終結し,屈曲に対してはこれを誘起するのである.脛骨を終結回旋の位置にひきつづき固定しておくのに,腸脛靱帯Tractus iliotibialisという長い靱帯が働いている.この靱帯は腸骨稜の前部から起り,その他なお大腿筋膜張筋の腱および大臀筋の一部の腱をなし,脛骨の腸脛靱帯粗面に終る.直立にさいして,この靱帯は股関節において述べた腸骨大腿靱帯とよく似た張りかたをなし,かくして脛骨の固定に役だっているのである.

 膝を屈曲しておいて,脛骨をその長軸のまわりにかなり広範囲に回旋しうることは,自分の脚で容易に確かがることができる.

[図452] 右の大腿骨の軸 Aは内側,Bは後方,Cは前方から見たところ.bcは頭および頚の軸,deは膝関節の回転軸, aはそれを側方から見たところ,VVは鉛直線, KKは大腿骨の構成軸.(H. Meyer)

[図453] 右の下腿骨の軸Aは脛骨と腓骨を前方から,Bは外側から見たところ. aは腸脛靱帯粗面,VVは鉛直線で,図452の鉛直線のつづき,KKは構成軸.(H. Meyer)

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最終更新日13/02/03

 

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