Band1.328   

 距腿関節の力学:これは蝶番関節で,その運動は,脛骨踝の先端の少し下を通って距骨を横に貫く水平軸を中心にして行われる.脛骨と腓骨の下端は結合して1つの洗濯ばさみのようになって,幽距骨滑車をはさみこんでいるので,靱帯がかたくて,しかも足を背屈し,ているときには,側方への運動は不可能である.しかし足が底側へ屈曲すればするほど, ぐらつき運動の可能性が増大する.この場合には距骨滑車の幅のせまい後部が,下腿骨の二叉のあいだに,ゆるくはまりこむことになるからである.

 リンパ管は後脛骨静脈に沿って上方へ走り,膝窩リンパ節にいたる(Baum. Anat. Anz. 67. Bd.,1929).

[図461] 距腿関節と距踵関節の関節腔(模型図) 右の足根骨の近位部を通って前額断した切り口を,後方からみたところ.(1/2) a踵骨,b腓骨, c距骨, d脛骨, 1後距腓靱帯,2踵腓靱帯,3三角靱帯の脛距部,4同じく脛踵部,5骨間距踵靱帯.1と3のあいだに距腿関節,2と5のあいだに距踵関節の各関節腔がある.

[図462] 足関節の関節腔(模型図) 左側の足根骨と中足骨を斜めに切った断面. (1/2) 脛骨の下端・足根骨・中足骨を通って,斜めに近位内側から外側下方へと切断してある.a脛骨,b距骨体,c距骨頭,d踵骨体,e踵骨隆起,f踵骨頭,g舟状骨,h立方骨,i, k, l第1・第2・第3楔状骨,m, n, o, p, q第1~第5中足骨,1は骨間距踵靱帯.距腿関節・距踵関節・距踵舟関節・踵立方関節はそれぞれ閉じた滑液腔をもっている.舟状骨と3つの襖状骨のあいだの関節は1つの共通した滑液腔をなして閉鎖している.足根骨と中足骨のあいだには3つの滑液腔がある(時にはそれが2つしかない).

2. 距踵関節Articulus talocalcanearis

 後距骨関節hinteres Sprunggelenkともいうべきもので,距骨と踵骨によってつくられる.

 関節面は距骨の近位踵骨関節面Facies articularis calcanearis proximalisと踵骨の近位距骨関節面Facies articularis talaris proximalisである.前者はかどのとれた矩形の輪郭をもつ凹面で,後者は凸面である.

 関節包は薄くてゆるやかで,軟骨縁の近くについている.

 関節腔は独立しているが,年とった人では距腿関節とつづいていることが珍しくない.

 特別の装置として次の2つの靱帯がある.

 1. 内側距踵靱帯Lig. talocalganeare tibialeは足根洞Sinus tarsiの内側部にある.

 2. 腓側距踵靱帯Lig. talocalcaneare fibulareは前距腓靱帯の付着するところより下方で距骨の外側面から起り,踵骨の外側面につく(図460, 463).

 その他なおFickによってとくにLig. talocalcaneum mediale superficiale horizontale(水平浅内側距踵靱帯) (図459, 464)と名づけられた靱帯がある.これは距骨近位突起から起って踵骨の載距突起にいたるものである.

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最終更新日13/02/03

 

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