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 踵舟靱帯の意義は距骨頭を下から支えることにある.この靱帯がゆるむと,距骨頭が底側へおしやられ,足の円蓋が平らになって,いわゆる扁平足Plattfußになるのである.

3. 二分靱帯の踵舟部Pars calcaneonavicularis lig. bipartiti:二分靱帯Lig. bipartitumumはSchltisselband des Chopartschen Gelenkes(ショパール関節の鍵をなす靱帯の意)とも呼ばれるもので,yまたはv字形の靱帯である.外科学で重要なものであるが,くわしくはショパール関節の項を見られたい.

 この靱帯は踵骨の遠位背側縁, すなわち遠位距骨関,節面と立方骨関節面のあいだの稜から起り,2つの束に分れる.外側の線維束は二分靱帯の踵立方部Pars calcaneocuboidea lig. bipartitiとよばれ,立方骨の背側面にいたる.内側の線維束が二分靱帯の腫舟部であって,舟状骨の近位背外側のかどにつく(図460, 463).

4. 距舟靱帯Lig. talonaviculare:距骨頚の背側面から舟状骨の背側面にいたる(図460, 463).

4. 踵立方関節Articulus calcaneocuboideus

 この関節をつくっている骨は踵骨と立方骨である.

 関節面は踵骨の簸簿をなす立方骨関節面Facies articularis cuboideaと,これと対応した形を呈する立方骨の近位関節面である.

 関節包は内側ではかたく張っているが,外側ではゆるやかで軟骨縁から少しはなれたところに付いている.関節腔はたいてい近隣の関節から全く独立している.しかしFickは距踵舟関節との結合を少なからず見ている.

 特別の装置としては次の補強靱帯がある(図463, 464, 467).

 1. 二分靱帯の踵立方部Pars calcaneocuboidea lig. bipartiti:上にくわしく述べた二分靱帯の外側部である.立方骨の背側面につく.

 2. 背側踵立方靱帯Lig. calcaneocuboideum dorsale:踵骨の背外側面から起り,立方骨の背側面につぐ.

 3. 底側踵立方靱帯Ligg. calcaneocuboidea plantaria:幅の広い靱帯で,踵骨の底側面の遠位端から起り,扇状に前方にひろがって立方骨粗面につく(図464).

a)長足底靱帯Lig. plantare longum:足のすべての靱帯のうちで最も長いもので,踵骨隆起の脛側および腓側結節の基部と,両結節間のくぼみとから起り,さらに踵骨の底側の大きい縦の隆起の全表面から起り,放射状に前方へひろがって中足骨の底につく.このさい最も表層(底側)の線維束は立方骨の長腓骨筋腱溝を越えて伸び,これによって長腓骨筋の腱の通る管がつくられている.深層(背側)の線維束は立方骨粗面につく(図464).

b)横底側踵立方靱帯Lig. calcaneocuboideum plantare transversum

c)斜底側踵立方靱帯Lig. calcaneocuboideum plantare obliquum

ショパール関節Chopartsches Gelenk(図467)

 距踵舟関節と踵立方関節とをいっしょにして,外科学ではショパール関節とよぶ.両関節の関節腔隙の背側稜は,足の長軸に対して横におかれたS字をなす1本の曲線をえがいている.このSは内側(脛側)部が前方へ凸であり,外側(腓側)部が後方へ凸である.両関節はショパール関節という名のもとに総括されるが,両者の関節腔はほとんど常に分離している.両関節が1つの名称にまとめられているのは,全く臨床的な見かたによるもので,二分靱帯がきれると,足のこの場所から遠位部が容易に分離するからである.この靱帯についての知識は手術を行う上で重要である.この靱帯を切断すると,はじめて関節腔が開く.それでこの靱帯はSchtüsselband des Chopartschen Gelenkes(ショパール関節の鍵をなす靱帯)とよばれるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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