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II. 筋 系Systema musculorum, Das Muskelsystem

(筋学Myologia)(人体の筋学MuskellehreはP. Eisler, Die Muskeln des Stammes. Jena 1912, 更にFrohse und Fränkel, Die Muskeln des menschlichen Armes. Jena 1908およびdie Muskeln des menschlichen Beines, Jena 1913に詳述されている.--筋の作用MuskelwirkungについてはR. Fick, Handbuch der Apatomie und Mechanik der Gelenke, Teil IIIに詳細な記載がある.(原著註)

A. 筋学総論Allgemeine Muskellehre

1. 序論

 原形質はすべて,収縮する性質をもっている.筋組織においては,この性質がはなはだ高度に達していて,一定の様式に発現し,複雑な法則のもとに置かれている.

 生体がもっているこの種の能動的な運動素材の全部が,横紋筋・平滑筋・心筋という3つの相異なる形にわかれている(59頁参照).前の2者はからだの中で広汎に用いられていて,横紋筋は特に骨格の各部の運動に使用され,これに反して平滑筋は特に内臓領域の運動に使用されている.

 骨格の各部相互の運動は,体を全体として空間の中で動かすのに必要であり,また上肢がなすことのできるあの多種多様な活動を遂行するために必要である.筋の活動によつ{生ずる体幹の拡張および縮少が,呼吸を可能にする.筋の活動は明瞭な言語を発するうえに,更にまた他の型の発音を行なううえに重要な役割をなしている.筋の活動は感覚器の働きにも大切な役目を果している.食物の摂取およびそれを腸管内を運ぶのも筋の活動こよるのである.体内を循環する体液全部の流れは,やはり筋の活動によって維持されている,筋の活動によっておこる仕事の価値を知るためには,自然のありとあらゆる営なみにおける運動現象のもつ意義をはっきりと掴まなくてはならない.

 平滑筋が体内で用いられている面積の広がりは骨格筋に劣らないとしても,骨格筋はその総量においては平滑筋を著しく凌駕している.その量が多いことの一因は骨格筋が両側性の任務をもつことである.すなわち成人の骨格筋の重さは平均して約30kgであるが,平滑筋はこの重さの一小部分にしか当らない.

 平滑筋は層をなしているとしても,なお本質的にはたがいにつながりつつ広がっていて,ごく稀れにかなり一定した配列を示すに過ぎないが,骨格筋の配置はそれと違った法則に従っている.すなわち筋全体が非常に多くの個々の部分に分けられていて,これはMuskelindividuen(個々の筋の意)またはMusculi, Muskelnと呼ばれている.後者はその働きが骨格に及ぶことができるように,一定の様式に従って骨絡に固着している.300個以上の別々の骨格筋があり,これらは規則正しく分布して骨格を運動させる器官としての役をなしている.

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最終更新日13/02/03

 

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