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e)腱鞘Vaginae tendinum, Sehnenscheiden

 腱鞘は滑りやすい,両端の閉じた管のかたちをしていて,次に述べるような腱のところにある.すなわちその腱では運動がかなり大きい範囲におこって,且つ非常に容易に滑べることと結びついているのである.

 この管の壁には次の2層が区別される,外側にある線維性の層,すなわち線維鞘Vagina fibrosaおよび内側にある滑液性の層,すなわち滑液鞘Vagina synovialisである.滑液鞘は腱じしんの表面をも被っているので,滑液鞘の内外両葉を区別することができる.この両葉のあいだにある隙間には関節滑液に似た少量のつるつるした液体が入っている.内外両葉は腱鞘の盲端でたがいに移行するとともに,腱の1個所でもたがいに移行し,ここがHilusといわれるのはもっともなことである(図468).この門から脈管および神経が腱に入る.このようにしてできている板あるいは索は腱間膜Mesotenonという一般的な名で呼ばれる.手足の指では,この腱間膜は腱ヒモVincula tendinumとして知られている.

 滑液鞘の外葉にはしばしば豊富なひだが形成されている.このひだは疎性結合組織と多数の脂肪細胞とからなり,関節の滑液膜絨毛と比較すべきものである.滑液鞘の微細構造もまた,その最内方の層が一様な構造を呈し,そこに細胞を含む点では関節内膜の構造に似ている.閉じた内皮性の膜は存在しない.

 線維鞘の表面は線維に富む条,すなわち鞘状靱帯Ligg. vaginaliaによっていろいろ違ったぐあいに強められていることがある.

[図468] 腱と腱鞘とを模型的に示す 滑液鞘Vagina synovialis tendinisは赤くしてある,横断.

f)筋滑車Trochleae musculares, Muskelrollen

 筋滑車とほ筋の腱に対する下敷となり,あるいは腱の通過に役だつ装置に名づけられたもので,ここで多くは腱の走る方向が変る.筋滑車に次の2者を分けることができる:靱帯滑車Bandrollen,これは靱帯で作られているもので,例えば上斜筋の滑車である.これに対して骨滑車Knochenrollenは骨の表面が軟骨に被われたものであって,例えば立方骨粗面,これを長腓骨筋の腱が通っている.

g)粘液嚢および粘液鞘Bursae et Vaginae synoviales. Schleimbeutel und Schleimscheiden

 粘液嚢は滑液性の嚢であって,その性質および意義は滑液性の関節包ならびに腱鞘のそれと同じである.粘液嚢および粘液鞘は,筋あるいは腱が固い構造物(骨,軟骨など)にぶつかる多数の場所にみられる.それはたいていは単独に存在し,しばしばいくつかの小室に完全にあるいは不完全にわけられている.二次的に関節包と続いていることもあるが,また関節包力1それ自身の拡張や突出をなしていることがある.他の粘液嚢は独立した位置を始終たもっている.

4.器官としての筋および腱の構造

 筋はその大部分が筋線維Maskelfasernより成るのはもちろんのことであるが,器官としての1つの筋にはなお他の組織および器官が関与している,すなわち結合組織,神経,脈管である.

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最終更新日13/02/03

 

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