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 変異:大小の両菱形筋はしばしばたがいに融合している.小菱形筋の起始は第4頚椎にまで達していることがあり,稀には後頭骨にまで達する.これを後頭肩甲筋M. occipitoscapularisあるいは菱形肩甲筋M. rhomboideoscapularisという.起始の数が普通より減少していることもある.

 この筋が肩甲骨に付着する広さが,普通よりも広いかまたは狭いかということは,起始の数が普通より多いか少いかに伴うのである.広背筋および大円筋との結合もみられる.

4. 肩甲挙筋M. levator scapulae. (図483, 484)

 この筋は第1~第4頚椎の肋横突起の後結節から4本の筋束をもって起り,つよく傾斜して下方に走り肩甲骨の上角に達してここに付着し, また短い腱束をもって棘上窩のところで肩甲骨の椎骨縁に付いている.環椎から起る筋束が最も強大であって,他の筋束は幅の狭い起始腱をもってはじまる.

 神経支配:III~V頚神経の枝が上下にならんでこの筋に達する.

 脊髄節との関係:C. III, IV, V.

 作用:この筋は肩甲骨を前上方に引く.

 変異(肩甲挙筋の変異として停止の2裂,迷走筋束とが28体のうち15体(53, 6%),24側で認められた.(進藤篤一:医学研究,12巻,2223~2233,1938).):個々の筋束がしばしば分れている.下部の起始頭の欠如による起始の減少はその増加よりもいっそうしばしばみられる.起始の数が普通よりも増しているときには,この筋は第7頚椎にまで達することがある.上部の起始頭の1つが,乳様突起からおこることがある.副停止accessrische Ansätze,たとえば肩甲棘に付着するものがみられ,また隣接する筋膜および筋との結合もみられる.

第2群:二脊椎から肋骨にいたる筋

1. 上後鋸筋M. serratus dorsalis cranialis.(図483)

 この筋は薄い幅の広い腱をもって下部2個の頚椎と上部2個の胸椎の棘突起からおこり,外側ならびに下方に走って鋸状に4つに分れて,第2~第4肋骨で,その肋骨角より外側のところに付いている.

 神経支配:1~IV胸神経(時にVIII頚神経も加わる)の前枝による.

 脊髄節との関係:Th. I~IV,更に40%においてC. VIIIも加わる(Eisler).

 作用:この筋の停止をなしている肋骨を挙上するものである.

 変異:この筋が全く欠けていることがあって,その場所には筋膜だけがみられる.起始および停止の数が増し,または減っていることがある.第7頚椎および第1胸椎の起始だけは常に存在する.停止Insertionは起始の数が多いか少いかに応じて第1~第6肋骨に及ぶこともあり,あるいはわずか2本の肋骨だけから起ることもある.

2. 下後鋸筋M. serratus dorsalis caudalis. (図483)

 この筋は下部2個の胸椎および上部2個の腰椎の高さで腰背筋膜の1葉からはじまり,外側および上方に走り,上後鋸筋と同じように鋸状に4つに分れて最下4個の肋骨の下縁で,肋骨角の外側に付いている.

 神経支配:IX~XII胸神経の前枝による.

 脊髄節との関係:Th. IX~XII.

 作用:(R. Fickによれば)この筋は最下4個の肋骨を外方に引き,そして横隔膜が内方に引くのに拮抗してはたらく.

 変異:この筋も上後鋸筋のように欠如して,腱様の膜によって代られていることがある.その起始と停止ははなはだ変化に富んでいる.

第3群:長い背筋

1. 板状筋M. splenius. (図483, 484)

 この筋は僧帽筋,菱形筋,肩甲挙筋,上後鋸筋に被われていて,斜走する帯のようなかたちをなし,いっそう深くにある項筋の上をめぐっている.頭部と頚部とを区別し,これを頭板状筋M. splenius capitis.頚板状筋M. splenius cervicisという.この2つは程度の差があるがたがいに合していることが多い.

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最終更新日13/02/03

 

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