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胸部ではその筋束が横突起より,また頚部では下部4個の頚椎の関節突起よりでるので,この筋の頚部は外側にあって,しかも上部にあるものほど,半棘筋による被われ方が少なくなっている.

 筋束は多数の起始部から斜めに内側へ上方に走り,棘突起の全長および椎弓に付着している.そのさい,筋束は起始から停止までのあいだに1~3個の椎骨を越えている.

 この筋は半棘筋と幾重にも結合している.

 神経支配:脊髄神経の後枝の内側枝による.

 脊髄節との関係:C. III~S. III(Schwalbe);C・III~L. V(S.1) (Eisler).

 作用:両側の多裂筋は脊柱を伸ばし,1側の多裂筋は脊柱を回す.

7. 回旋筋Mm. rotatores. (図487)

(西は日本人について回旋筋の領域における未知の筋束として 1)Fasciculi costoarcuales. 2)Fasciculi interarcuales. 3)Fasciculi transversoarticulares. 4)Fasciculi articulocostalesを挙げ,横突棘筋系の分化を系統発生的に説明した(西成甫1解剖学雑誌,10巻, 59,1937).)

 Theileによれば,回旋筋は11個あるだけで,しかも脊柱の胸部のところにだけ存在する.

 H. Virchowによれば脊柱の胸部のところでは11個であって,12個あることはいっそう稀れで,時としては10個あるという.

 これは小さい筋で,多裂筋よりは走り方がいっそうゆるやかな傾斜で,横突起の上部および背方部からでて,直ぐ上の椎骨の椎弓基部の外面におわる.第1回旋筋はふつう第2胸椎から第1胸椎にゆく.

 神経支配:相当する脊髄神経による.

第4群:短い背筋

1. 棘突間筋Mm. interspinales cervicis. (図485, 487)

 対をなす小筋で,頚部において上下に相隣る棘突起のあいだに張られて項中隔の左右にある.

 神経支配:相当する脊髄神経による.

 作用:脊柱の頚部を伸ばす.

2. 肋横突間筋Mm. intertransversarii cervicales.

 この筋は頚椎の肋横突起の後結節にはじまり,すぐ隣りの椎骨の後結節に向う.

 神経支配:相当する脊髄神経による.

 作用:脊柱の頚部を側方に曲げる.

3. 長,短横突肋骨筋Mm. transversocostales longi et breves. (図485, 487)

 各側に12個ある.この筋は第7頚椎の肋横突起と第1~第11胸椎の横突起のそれぞれ尖端からおこり,外側下方に走って扇状に広がり,下方につづく肋骨の外面に付着している.

 下部肋骨ではこの筋(上部肋骨にもしばしばみられるが)にいっそう長い副線維があって,この副線維は肋骨1個をとび越えてその次の肋骨におわっている.それゆえ長,短横突肋骨筋を区別するのである.この筋は外側で外肋間筋と合している.

 神経支配および脊髄節との関係:相当する肋間神経による.第1横突肋骨筋は第8頚神経による.

 作用:(以前には肋骨挙筋とよばれたが)決して肋骨を引き挙げるものではない.脊柱を伸ばすこと,脊柱をそのがわに傾けること,脊椎を反対側に回すことにあずかる.

4. 深項筋群Mm. nuchae profundi. (図485487)

2) 日本人において大と小後頭直筋の間にM. rectus capitis posterior intermedius(Shindo)が現われることがある(進藤篤一:医学研究,12巻, 2223~2234,1938).3)森は男の死体112例を材料として大後頭直筋を3型に,小後頭直筋を4型に分類した(森 優:解剖学雑誌, 6巻,17~18,1933).

 a)大後頭直筋M. rectus capitis dorsalis major. 軸椎の棘突起からおこり外側上方に走り,項平面線の中1/3に幅ひろく付着している.

 神経支配:後頭下神経の後枝.

 脊髄節との関係:C.1(II).

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最終更新日13/02/03

 

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