Band1.373   

腹筋の腱膜Aponeurosen der Bauchmuskeln

 内,外両腹斜筋および腹横筋は強い幅の広い腱すなわち腱膜Aponeurosenに移行している.この腱膜は前腹壁の重要な構成要素であって,一連の特殊性を示しているので,それを理解するためには腹筋をひとまとめに観察する必要がある.すなわちこの腱膜は白線や腹直筋鞘を作り,鼡径輪の形成にあずかっているのである.

1. 白線Linea alba(図492, 494496)

 白線は,腹部にある胸骨ともいえるもので(その長さは35~40cm),胸骨から恥骨結合へと延びて,その幅は臍より上部では10~25 mmであるが,臍のあたりでは14~18 mmである.もっと下方ではその幅は狭くなるが,高さは増してくる.白線の下端は恥骨結合にしっかりと付着し,ここではその後面にある三角形の靱帯,すなわち白線補束Adminiculum lineae albae(図499)により補強されている,この補束は恥骨結合の上縁から幅広くはじまっている.

 白線は本質的には幅の広い腹筋の腱線維がたがいに交わってできたものである.自線には交叉する線維のほかに縦走する線維もあって,これは下方は白線補束から,上方は胸骨の剣状突起からつづいている.なお臍部には輪走線維がある.臍部は白線の中で最も幅の広いところで,胎生期の間はここに1つの孔があって,この孔の縁をなすものを臍輪Anulus umbilicalis, Nabelringと呼ぶ.ここを通っていくつかの胎児器官が通る.出産後はそこに閉じこめられて残ったもの,それは特に2本の臍動脈の残りであるが,その増殖がはじまる.この増殖したものが臍輪および皮膚と癒着することによって確実に閉鎖する.臍輪の上部に当って,臍静脈の位置に一致して,臍輪とそこを満たしているものとの間に結合の比較的ゆるいままで残っている所があって,そのために管状の道があって,これが後天性の臍ヘルニアに大きい役割をなすのである.腹横筋膜は臍の周囲でいっそう強固にできている.

2. 腹直筋鞘Vagina m. recti abdominis,  Rectusscheide. (図490, 492, 494496)

 腹直筋の腱鞘はすでに述べたごとく,その前後の2葉が次のように配列されている.内腹斜筋の腱膜は腹直筋を各1まいの前葉と後葉とで包んでいる,前葉は腹直筋の前面を全長にわたって被っているが,後葉はわずか半環状線にまで達しているだけである.前葉はその全長にわたって外腹斜筋の腱膜によりその前面を補強されている.腹横筋の腱は上部では内腹斜筋の後葉を半環状線までの範囲で補強し,これに反して下部では,内腹斜筋の前葉を後方から補強している(図494496).

 半環状線Linea semicircularis. 他の意見によると,腹横筋の腱膜は半環状線に終ることなく,これを越えてなお下方にまで達しているという.

腹筋膜Fasciae abdominis

 腹壁は外から内に向って次の数層に分れている.すなわち1. 皮膚,2. 強靱な皮下結合組織(その強さは多少ちがう),3. 皮下の筋膜,すなわち浅腹筋膜,これに続いて4.3つの腹筋がある.おのおのの腹筋はその両面をそれぞれ固有の薄い筋膜に包まれている.外腹斜筋の外面にある筋膜はわずかな結合組織の脂肪の少い層だけによって浅腹筋膜から分けられており,腹横筋の内面にある筋膜,すなわち腹横筋膜Fascia transversalisは腹膜Peritonaeum, Bauchfellに被われている.腹横筋膜と腹膜とのあいだに前腹壁では多くの場合,脂肪の少ない腹膜下の組織がある.これらの筋膜のうちで浅腹筋膜と腹横筋膜とをもっとくわしく観察してみよう.

1. 浅腹筋膜Fascia superficialis abdominis.

 前に述べたように,この筋膜は皮下の結合組織と筋層とを分けている.これは臍より上部では薄くて,浅胸筋膜につづいている.臍より下部ではいっそう厚くなり,弾性線維を著しく豊富にふくんでいるが,特に恥骨部の白線上ではそうであって,ここでは陰茎係蹄靱帯Lig. fundiforme penisと陰茎(陰核)提靱帯Lig. suspensorium penis(clitoridis)とに移行している.

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最終更新日13/02/03

 

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