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鼡径鎌の第3の縁,すなわち底Basisは恥骨靱帯Lig. pubicum Cooperi(304頁および図435)と幅ひろく結合している.

 外側の束は,その位置が内側鼡径窩と外側鼡径窩とのあいだにあるので窩間靱帯Lig. interfoveolareと呼ばれ,いろいろな広さの束で骨盤の方に向って裂孔靱帯を越えて恥骨靱帯にまで放散している.上方では腹横筋膜のあたりで消失するか,あるいは腹横筋の腱と続いており,あるいは半環状線と続いていることさえある.窩間靱帯の内側縁は鼡径鎌に程度の差はあるが近づいている.またその外側縁は自由縁をなし,腹膜下鼡径輪の半月ヒダにまで達していることがあり,そのときには腹膜下鼡径輪の内側の境をなしている.

 窩間靱帯の内側縁と鼡径鎌の外側縁とのあいだにある腹横筋膜の薄い部分(図497で明るい卵円形の部分として画かれている)は内側鼡径窩に一致している.ここが直接鼡径ヘルニアdirekte Leistenbrücheが出てくるところである.下腹壁動静脈は内方から窩間靱帯を被い,あるいは鋭い角をなしてこれと交わっている.

 鼡径鎌および特に窩間靱帯はときどき小さい筋束,すなわちM. interfoveolaris(窩間筋)によって代られ,あるいは補強されている.窩間筋の線維は内腹斜筋ならびに腹横筋に由来するのである.これは腹横筋膜より前方にある.さらに腹横筋膜より後方にも小さい筋束が見いだされている.これはM. tensorfasciae transversalis(腹横筋膜張筋)とよばれる.この領域についての比較的新しい研究はStrecker, F, , Arch. Anat. Phys.1913, Anat., Anz.,98. Bd.-Graf Haller, Z. ges. Anat., 62. Bd, ,1921に記されている.

[図497] 右の内側鼡径窩とその周囲, 内部(後方)から解剖したもの  Ad. 白線補束;Mr. 腹直筋;V. d. 精管および腹膜下鼡径輪;F. i. 鼡径鎌;L. H. 窩間靱帯. F. i. とL. H. との間に鼡径窩が明るい卵円形として示されている.(BrauneおよびHisによる)

γ. 鼡径管Canalis inguinalis, Leistenkanal

 鼡径管の外側の出口,すなわち皮下鼡径輪Anulus inguinalis subcutaneusは外腹熱筋の腱膜のもつ隙間であり,鼡径管の内側の入口,すなわち腹膜下鼡径輪Anulus inguinalis praeperitonaealisは腹横筋膜Fascia transversalisの鼡径部にある.鼡径管は前腹壁のほとんど全厚を斜めの方向に貫いており,しかもこの管は腹膜下鼡径輪からみると後外側上方から前内側下方に走っている.その走向はほぼ外腹斜筋の線維の方向に一致するのである,両鼡径輪の距離,すなわち鼡径管の長さは4~5cmである.また浅鼡径輪の縦径ははなはだまちまちであり,一般に男では1.5~3cmのあいだを動揺し,女では約1cmである.

 鼡径管は円筒形ではなく,前後の方向におされた形である.鼡径管に4つの壁を区別することができる,すなわち幅の広い2つの主壁Hauptwände,すなわち後方および前方各1つの主壁ならびに幅の狭い2つの副壁Nebenwände,すなわち上方および下方各1つの副壁である.ところで精索は鼡径管の軸に平行して走るのではなく,次のように傾いている,すなわち腹膜下鼡径輪のところではその上壁により近く,浅鼡径輪のところではその下壁により近く位置している.

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最終更新日13/02/03

 

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