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そこでひとつづきの筋層ができ上るわけで,胸郭の背方部では,この筋層が比較的よく発達して被っていることが多い.このようにできている筋層を肋下筋Musculi subcostalesと名づけている.

 肋下筋が完全に欠けていることもあり,また多くの例ではたがいに結合して1つの長い筋条となり,これが第3肋骨から第12肋骨にまでも達している.

 神経支配:肋間神経による.

 脊髄節との関係:Th.1~XI.

 肋間筋群の作用はすでにしばしば研究されてきたが,しかしその判断はまちまちである.この論争をGalenusにまでもさかのぼると,それ以来実に1700年以上を経ている.--R. Fickによれば肋間筋群の作用は次のものであるという.すなわち静かに呼吸しているときには,吸気は外肋間筋と肋軟骨のあいだの筋によって起り,呼気は内肋間筋によって起るのであって,呼気が胸郭の弾性“Elastizität des Brustkorbes”によるというようなことはない.(肺を含まない)胸郭の平衡位としては吸気の状態がそれであり,呼気のそれではない(Arch, Anat. Phys.1897およびHandbuch, 3, Bd.,187頁).しかし私(Kopsch)は,内と外の両肋間筋がおそらくいつもいっしょになってはたらき,しかも吸気のときにも,呼気のときにも作用することを信じている.

 この両筋にはさらにもう1つ別のはたらきがある.すなわち両筋はその緊張によって,肋間の軟部組織が吸気のときに攣入しないようにし,また呼気のときには膨出しないようにしている.もしもこの両筋がなかったら,呼気のときに肋骨のあいだに嚢ができて,そのなかに肺の一部が入り込んではさまれることにもなるであろう.

 変異:内,外両肋間筋のいずれかが欠けていることがある.これらの筋では筋肉質の方が多いこともあり,腱組織の方が多いこともある.Le Doubleはほとんど全部が腱性である肋間筋をみた.しばしば最下部の内肋間筋が内腹斜筋と,最一ド部の外肋間筋が外腹斜筋とつづいていることがある.

2. 横突肋骨筋Mm. transversocostales. (背筋の項361頁参照).
3. 胸横筋M. transversus thoracis. (図504)

 肋軟骨の内面にあって,筋線維と腱線維とよりなる1つの薄い層であり,下方は剣状突起,胸骨体の下部および1個あるいは2個の胸骨肋の肋軟骨の後面から起っている.

 その線維は外側ならびに上方に走って次のように散開している,すなわち下方の線維は水平に,中間のものは斜め上方に,上方のものはほとんど縦の方向に走っている.これらの線維は(5個の)尖頭に分れて第2~第6肋軟骨の下縁でその肋硬骨との移行部に固く着いている.最下の尖頭の線維は腹横筋の線維に平行に走り,後者の胸郭の内壁につづく部分が胸横筋なのである.

 神経支配:第(2)3~6肋間神経による.

 脊髄節との関係:Th. (II)III~IV(Rauber).

 作用:この筋は肋骨を下方に引き,そのために呼気筋として作用する.

 変異:この筋は全く欠けていることがある.その個々の尖頭は完全に独立していることがある.この筋は上方には第1肋骨まで,下方には第7肋骨まで達していることがある.ごくまれに見られるM. transversus colli(頚横筋)は胸骨柄のうしろにあり,正中線で他側の同じ筋と合していて,おそらく胸横筋の最も上方の尖頭とみなされるのであるが(Luschka. LeDouble), Eislerによってこのことが否定されている,頚横筋はむしろ胸骨甲状筋の変位した部分であるという.

第3群:横隔膜Diaphragma, Zwerchfell(図505)

 横隔膜は胸郭下口の内側の周りからおこり,なお下方に広がって腰部脊柱の大部分に及んでいる.腹の方に向って開いている胸郭腔の中に円蓋状に突入して,2つの腔所,すなわち胸腔Cavum pectorisと腹腔Cavum abdominisの境をしている.その中央部Mittelteilは円蓋の頂きを占めている腱,すなわち横隔膜の腱中心Centrum tendineum, Zentralsehneである.その起始に一致して各側に腰椎部Pars lumbalis,肋骨部Pars costalis,胸骨部Pars sternalisという3つの部分が区別される.

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最終更新日13/02/03

 

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