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 横隔膜の円蓋が深く胸郭のなかに入っていることは,腹部内臓の上方の部分が直接に胸郭の保護を受けることになる.その円蓋のへこんだがわには腹部内臓(とくに肝臓,胃および脾臓)の集まりの全体がちょうど関節窩にはまっている関節頭と同じようにぴったりと入っている.肺がその正常な弾性を失つたときには,腹部内臓が絶えず引張る力をおよばすために横隔膜と肺とが引きさげられるようになる.横隔膜の高さについての著しい年令差はこれによって説明される.

 上に述べた諸三角Trigonaに相当する胸腔と腹腔との間の薄くなっている部分は実地的意義が大きい.膿性滲出物はここでかなり容易に一方の腔所から他方へと突破することができるし,ヘルニアが比較的たやすく起る等々である.

[図506] 頚筋と舌骨上筋I(11/20)  左:表層, 広頚筋を残してある,右:表 層, 広頚筋を取り除いてある.

 変異:先天性の横隔膜欠損というのがあって,E. Schwalbeがその1例を記載した(Morph. Arb.,8. Bd.,1898).これに似たものを私は新生児1例で見たことがある.Erna Greiner(Z. angew. Anat., 5. Bd, ,1919)は横隔膜ヘルニアのある新生児2例を記載している. しばしば肋骨に付着する個々の起始尖頭が多少ともたがいに離れているために,それらのあいだにあるすきまLückenで,胸膜と腹膜が筋膜を伴ってたがいに直接している.上に述べたごとく,このようなすきまで比較的大きいものは筋の主要各部のあいだに見られる.隣接する筋とのつながりについては,腹横筋・腰筋・腰方形筋に達する線維束が記載されている.

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最終更新日13/02/03

 

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