Band1.394   

 神経支配および脊髄節との関係:舌下神経係蹄の枝でC. I~III(IV) (Bolk),C. II~IV(Rauber)から来るものによる.

 作用:甲状軟骨を下方に引く.

 変異:この筋の下縁には1つあるいは2つの腱画が見られることがあり,また時にはその起始が第2肋骨に及んでいることもある.1つの筋束が甲状舌骨筋あるいは喉頭咽頭筋に移行していることもまれでない.他の筋との結合はいっそうまれである.胸骨甲状筋は甲状腺が大きくなっているときには,多くは幅が広く,且つ薄くなっている.両側の筋が前述の筋のように正中線でたがいに全く結合していることがあり,あるいは少数の筋束によって結合していることもある.

5. 甲状舌骨筋M. thyreohyoideus. (図508)

 この筋は胸骨甲状筋の続きにあって,甲状軟骨の斜線から起り舌骨体の側方部ならびに大角に停止している.胸骨甲状筋の外側部の線維は直接この筋に続いている.

 この筋と舌骨の大角との間には甲状舌骨筋嚢Bursa m. thyreohyoideiがある.

 神経支配:舌下神経の1枝.

 脊髄節との関係:C. I, II(Bolk).

 作用:舌骨を下方に引き,甲状軟骨を上方に引く.

 変異:M. levator glandulae thyreoideae(甲状腺挙筋):この筋は時としてみられる細い筋で,舌骨体あるいは甲状軟骨から甲状舌骨筋の内側を,甲状腺(峡,あるいは左右の両葉, あるいは錐体葉)の被膜へと走っている.

 M. depressor glandulae thyreoideae(甲状腺下制筋)と呼ばれるものは甲状軟骨にはじまる1つの筋束で,まれに(約1%)見られるものである.この筋束は甲状腺の中部葉がずっと上方にまで達しているときに,その後面に停止する.

6. 肩甲舌骨筋Momohyoideus. (図506, 508, 509)

 この筋は胸骨舌骨筋と同じ層にあり,上と下各1つの筋腹,すなわち上腹Venter cranialisと下腹Venter caudalisとよりなり,この両者は1つの中間腱により結合されている.下腹は肩甲横靱帯にはじまり,あるいはこの靱帯の内側で肩甲骨の上縁と烏口突起の基部とではじまっている.この筋は次第に薄くなりつつ内側および上方に向きをかえ, 鎖骨のうしろに出て,ここで中間腱Zwischensehneに移行する.この中間腱は中頚筋膜と癒着しており,また頚部の大きい血管と交叉している.上腹は上方に急な傾斜をなして舌骨体へと走り,胸骨舌骨筋の外側で舌骨に停止する.

 神経支配および脊髄節との関係:舌下神経係蹄の枝でCI~III(Bolk), C. II~IV(Rauber)から来るものによる.

 作用:舌骨を下方に引き,かつ頚筋膜を緊張させる.

 肩甲舌骨筋が胸鎖乳突筋と交叉することによって2つの重要な三角が作られる.そのうち上方にあるものは頚動脈三角Trigonum caroticum, また下方にあるものは肩甲鎖骨三角Trigonum omoclaviculareである.これらの三角に相当して頚部の皮膚にへこみがあり,このへこみはそれぞれ頚動脈窩Fossa caroticaおよび大鎖骨上窩Fossa supraclavicularis majorと呼ばれる(図151).

 変異:上,下の両腹の一方あるいは両方が欠如していることがある,上腹あるいはこの筋の全体が重複していることがある.この筋が鎖骨のそばを通る間に鎖骨からの副頭accessorischer Kopfを受けることもまれでない.その場合には上肢帯をなす2つの骨がこの筋の起始となっている.しかしながら下腹がまた鎖骨からだけ起ることもあり,そのときにはこの筋はM. cleidohyoideus(鎖骨舌骨筋)というべきものになっているのである.

7. 前斜角筋M. scalenus ventralis. (図502, 503, 508510)

 この筋は3個あるいは4個の尖頭に分れて,第3あるいは第4~第6頚椎の肋横突起の前結節から起り,外方ならびに前方に向って下行し,第1肋骨の斜角筋結節に停止している.

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最終更新日13/02/03

 

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