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 最小斜角筋M. scalenus minimus. この筋は第7頚椎の肋横突起から起り,胸膜頂に達する.Okamoto(Anat. Anz., 58. Bd.,1924)によればヨーロッパ人では成人で54%に,子供で72%に存在する.

8. 中斜角筋M. scalenus medius. (図502, 503, 508510)

 これは6~7個の尖頭をもって,第2~第7あるいは第1~第7頚椎の肋横突起の脊髄神経溝の外側縁から起り,鎖骨下動脈溝の背方で第1肋骨の上面,さらに第1肋間隙の筋膜および第2肋骨の上縁に停止する.

9. 後斜角筋M. scalenus dorsalis, hinterer Rippenhalter. (図502, 508510)

 これは2~3個の尖頭をもって第5または第6~第7頚椎の肋横突起の後結節から起り,第2肋骨に着く.

 前,中の両斜角筋のあいだに1つの重要な裂け目,すなわち斜角筋裂Scalenusspalteが開いている.これは鎖骨下動脈A. subclaviaと腕神経叢Plexus brachialisが通るためのものであって,鎖骨下静脈はここを通らずに前斜角筋の前を通る.前斜角筋のうえを横隔神経が胸腔へと走っている.一後斜角筋は中斜角筋と密着していることがある.

 神経支配:頚神経叢の枝による.(Rauberによれば)腕神経叢の枝も来る.

 脊髄節との関係:前斜角筋はC. V~VII,中斜角筋はC. (II)III~VIII,後斜角筋はC. (V)VI~VIII, 最後のものはEislerによればC. VIIあるいはC. VIIIによるという.

 作用(斜角筋群の)1肋骨を上にあげ,あるいはまた肋骨を固定しているときには,脊柱の頚部を曲げあるいは回すようにはたらく.

 変異:前斜角筋:この筋が全く欠如していることがある.時としてその起始が第2頚椎にまで達している.鎖骨下動脈がこの筋を貫いて走りあるいはこれより前方を通ることがある.横隔神経は(まれに)この筋の中をある長さだけ走っている,--中斜角筋:この筋もやはり全部欠場することがある.その起始の数が普通より減じて2個にまでなっていることがあるが,第3頚椎 からでる起始尖頭がかけることは決してないようである(Krause).またその停止が普通より下って第2肋骨,さらに第3肋骨にまで達することがある.--後斜角筋:この筋は全部あるいは一部を欠如することがある.その停止はすでに第1肋骨に見られることもあり,また第3あるいは第4肋骨にまで達していることがある.

10. 前肋横突間筋Mm. intercostotransversarii ventrales. (図510)

 これらの筋は上下に相隣る頚椎の肋横突起の前結節のあいだに張っている.

11. 頚長筋M. longus colli. (図510)

 この筋は頭長筋の内側にあり,環椎から第3胸椎にまで延びて,次の3つの部分よりなっている,すなわち直部Pars recta,上斜部あるいは環椎長筋Pars obliqua cranialis seu Longus atlantis,下斜部Pars obliqua caudalisである.

 直部Pars rectaは内側にあって,上下の両斜部の起始を結びつけており,上方は第2~第4頚椎体に,下方は下部の3個の頚椎体と上部の2~3個の胸椎体とに付着している.上斜部Pars obliqua cranialisは第3~第5頚椎の肋横突起の前部から起って,環椎の前結節に付着する.下斜部pars obliqua caudalisは上部の2~3個の胸椎体から出て第5および第6頚椎の肋横突起に達している.

 神経支配:頚神経の枝3本を受ける.

 脊髄節との関係:C. III~VIII.

 作用:頚椎の前方屈曲筋および回転筋としてはたらく.

12. 頭長筋M. longus capitis. (図508510)

 この筋は4つに分れた尖頭をもって第3~第6頚椎の肋横突起の前結節から起り,上方に向って走り後頭骨の底部に達して,そこにある2つの骨稜のうち前方のものに付着している(図486).

 神経支配:頚神経の枝による.

 脊髄節との関係:C.I~V(Krause).

 変異:第6あるいは第5頚椎からの起始が欠如することがある.その時にはこの筋に第2頚椎,時にはさらに第1頚椎からの起始が加わっている.--この筋は1つの細い筋束によって頚長筋と結合している.環椎からの起始が独立していることがある(3%).

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最終更新日13/02/03

 

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