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2. 前頭筋M. frontalis. (図513519)

 前頭筋は眉や眉間のあたりの皮膚や結合組織から起る.そのさいこの筋は眼瞼の輪走筋を所々で貫き,この輪走筋に対して前頭筋は1つの放射状筋となっていて,さらに眉間下制筋,籔眉筋ならびに眉頭下制筋の筋束をも貫くのである.その線維は頭頂部に向って散開してゆき,両側の前頭結節の高さで弓状にまがり帽状腱膜に移行する.左右の前頭筋の内側縁は,下の方では多少の差はあるがたがいに合しているが,上の方では離れて,そのあいだでは前頭面の一部がこの筋に被われていない.

 神経支配:顔面神経の側頭前頭枝による.

 作用:この筋は前頭の皮膚に横の皺を寄せ,眉を引きあげる.

 変異:この筋が欠けていることがある.両側の篩が正中線で交叉しそいることがある.しばしばこの筋がいくつかの筋束に分れている.後頭筋と直接に続くことは極めてまれである.

3. 側頭頭頂筋M. epicranius temporoparietalis(図513)

 この筋は広がりの点でも,厚さの点でもすこぶる変化に富む筋肉の薄い板であって,これは側頭部の腱膜の上にあり,前頭筋にまで達していることがある.この薄い筋肉の板は浅側頭動脈およびその両枝によって3つの部分に分けられている.その前方の部分,すなわち側頭部Pars temporalisは帽状腱膜にはじまり,帽状腱膜に終っている.中央の部分,すなわち三角部Pars triangularisは浅側頭動脈の前頭枝と頭頂枝とのあいだにあり,後方の部分,すなわち頭頂部Pars parietalisは以前に上耳介筋M. auricularis sup. といわれたものに相当する.これ(頭頂部)は帽状腱膜から起り,その筋束の大部分は耳介軟骨に,その後方の一小部分は帽状腱膜に停止している.

4. 眉間下制筋M. depressor glabellae(図513519)

 この筋は鼻背にはじまり,扇形に広がって前頭に達し,そこでは前頭筋よりも浅層にあり,皮膚に放散している.この筋の大きさははなはだ変化に富むのである.

 神経支配:顔面神経による.

 作用:この筋のはたらきは前頭筋に拮抗するものであって,眉間部の皮膚を下方に引き,鼻根のところで両側の眉の内側端のあいだに深い横の溝をつくる.

b)眼の周囲にある筋
1. 眼輪筋M. orbicularis oculi, Augenringmuskel. (図513519)

 眼輪筋の起始するところは内側眼瞼靱帯の上下の両面,上顎骨の前頭突起,前涙嚢稜,涙嚢,後涙嚢稜とそれよりさらに後方の部分,ならびに眼窩口の上顎部の内側部である.この筋に次の3つの部分を区別する.すなわち周辺にある眼窩部Pars orbitalis,眼瞼の範囲にある眼瞼部Pars palpebralis,および涙嚢の上にある涙嚢部Pars sacci lacrimalisである.

 眼瞼部Pars palpebralisは淡い色をした細い筋束からできており,眼瞼の実質のなかにあり,眼瞼縁の近くにまで及んでいる.これは外側では眼瞼の範囲を越えているが,上方と下方ではそれを越えていない.

 涙嚢部pars sacci lacrimalisの線維は後涙嚢稜および涙嚢から起って,眼瞼に達する(図519,第II巻,眼の項参照).

 眼窩部Pars orbitalisはもはや眼瞼には属していない部分である.これは眼瞼部よりも厚くて,いっそう濃い色をしており,さらに太い筋束をもっている.上眼瞼の周りにある部分は扇形に広がり,しかもその程度も強いので,内側の線維はほとんど垂直に上方へすすみ眉の内側端部に達している.これが眉頭下制筋M. depressorcapitis superciliiであるが,一方ほかの線維は外側にあるものほどいっそう垂直からはなれた方向をとっている.

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最終更新日13/02/03

 

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