Band1.403   

 神経支配:顔面神経による.

 作用:眼瞼部は眼瞼裂を閉じ, 涙嚢部は涙嚢を広げるようにはたらき,それによって涙が吸いこまれるように作用し,眼窩部は眼瞼の周りの皮膚に皺を寄せる.

 変異:眼瞼部と涙嚢部とはしばしば発達が非常にわるい.眼窩の上壁の下方で深いところにある筋束はM. transversus orbitae(眼窩横筋)として記載されている.RugeがM. transversus glabellae(眉間横筋)として記載したものは,鼻背のつけ根を越えて,正中線へと横の方向に走る眼輪筋の一部であって,これは正中線で他側の眼輪筋の線維と合している.この筋はまた以前にもH. Virchowによって見られたものである.

2. 皺眉筋M. corrugator glabellae. (図514519)

 この筋は眼輪筋の眼窩部に被われて,筋肉性に,あるいは短い腱をもって前頭骨から,しかも前頭上顎縫合のすぐ上のところから起る.その線維は斜め外側に走り,眼窩部を貫き,また前頭筋の線維をも貫いて,眉の中1/3の上方の皮膚に放散する.

 神経支配:顔面神経の側頭前頭枝のだす枝による.

 作用:この筋は眉を下内側に引き,鼻根の側方で前頭に向って上方に走る1つの深い溝をつくるので,その左右の溝によって鼻背の延長部を走る正中位のしわが皮膚にできる.しかし両側の薮眉筋が収縮するときは,正中に深い溝がたジ1つだけできることもしばしばである,また皮膚に固着する停止腱のために,この筋が収縮するときに多数の小さいくぼみが眉の上方にできる.

 変異:この筋は欠けていることがある,別々に弧立した筋束からなることも少くない.

c)鼻部の筋
1. 鼻筋M. nasalis. (図513519)

 この筋は梨状口から余りへだたっていない犬歯および外側切歯の歯槽隆起からおこり,ふつう口輪筋の上顎起始とつづいており,その外側の一部分は,初めは眼角筋に被われていて,鼻背の軟骨部へと走り,ここで腱性となって,他側の同じ筋の腱と合している.

 こうして鼻背の腱膜ができ,眉間下制筋が上からこれにつづている.しかるに内側の部分は近くにある鼻翼Nasenflügelへと走るのである.この部分にはたいてい中隔部Pars septalisというもう1つの筋束があって,これは膜性鼻中隔および外鼻孔の後縁の皮膚に及んでおり,しかもここに口輪筋の鼻起始があるのである.

 神経支配:顔面神経による.

 作用:強くはたらくときには鼻の軟部全体を下方に引くが,そのさいに側方の鼻翼溝の下部が深くなる.弱くはたらくときには鼻翼のみが作用される(H. Virchow 1908).

d) 口部の筋
1. 口輪筋Morbicularis oris, Mundringmuskel, Lippenmuskel, (図515, 516, 518, 519)

 口輪筋は口を閉じるはたらきをする筋で,口裂をめぐって輪状に広がっている筋線維系よりなる.その大部分が放射状に走る筋肉の続きをなしており,比較的小部分のみが独立した筋束である.口輪筋の実質を放射状に貫く線維の流れもあるが,この流れは顕微鏡的によってのみ証明することができる.

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最終更新日13/02/03

 

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