歴史的な偉大な解剖学書
作用:上腕骨を外方に回す.
変異:この筋はしばしば小円筋と癒合している.しかもSchwalbeおよびPfitznerによれば完全な癒合は約13%に,部分的な癒合は約12%に見られるという.その最も上部の筋束は程度の差はあるが独立する傾向を示し,これがM. infra spinam minor(小棘下筋)である.
この筋は横断面では円いが全体としてみると長四角形をしている.肩甲頚までの範囲で肩甲骨の腋窩縁から起り,一部は大結節の下部に,一部は関節包および上腕骨の頚に付着している.
神経支配:腔窩神経による.
脊髄節との関係:C. V.
作用:腕を外方に回し,関節包を緊張させることにあずかる.
変異:この筋と棘下筋との融合については,棘下筋の項を参照せよ.上腕骨の頚に停止する部分はM. teres minimus(最小円筋)として独立することがある.(日本人における小円筋と棘下筋との分離不全のものを古泉が集計している.古泉13/100(13%),小金井39/289(13.5%).足立3Ttns(20・3%).佐野(アイヌ)0/10(0%).また完全癒合は古泉8/100(8.0%),小金井37/189(10.7%),足立13/128(7.1%),佐野(アイヌ)0/10(0%).また保志場はこの問題についてさらに詳細に報告した(古泉光一:日本医科大学雑誌,5巻,1063~1083,1934;保志場守一:金沢医科大学解剖学教室業績,27巻,73~97,1937).)
[図528]肩甲骨における筋の起始と停止 右の肩甲骨の背側面.
この筋は横断面では円いが全体としてみると長めの四角形をしている.肩甲骨の下角でその背側面の一小区域から起り,上腕三頭筋の長頭の前を外側にすすんで,力づよい板状の終腱に移行して,この腱が広背筋の終腱のうしろで上腕骨の小結節稜に停止している.大円筋の終腱の縁は広背筋の終腱と合する.
この腱と上腕骨との間には1つの粘液嚢,すなわち大円筋嚢Bursa m. teretis majorisがある.大円筋の腱と広背筋の腱との間には同様に広背筋の腱下包Bursa m. latissimi dorsi(図531)という1つの粘液嚢があるので,大円筋の腱はその両面におのおの1つの粘液嚢をもつのである.(日本人においては大円筋停止腱と広背筋停止腱との間には96%に粘液嚢がある(古泉光一:日本医科大学雑誌,5巻,1063~1083,1934).)
神経支配:肩甲下神経IIによる.
脊髄節との関係:C. (V),VI, (VII).
作用:上腕を背方および内側に引き,且つこれを内方に回す.
変異:この筋は全く欠けていることがある.広背筋,菱形筋との結合が記載されている.きわめてまれではあるがこの筋が1つの筋束を上腕三頭筋の長頭あるいは上腕筋膜にあたえている.
三角形の扁平な筋であって,肩甲骨の肋骨面の筋線Lineae muscularesおよびこの線の間の部分から起り,力つよい終腱をもって一部は肩関節包に付着するが,大部分は上腕骨の小結節および小結節稜の上部に付着している.
最終更新日13/02/03