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 また尺側頭へと直接に続いて加わっている肘筋M. anconaeusは三角形の筋であって,これは橈側上顆および肘関節包からでて肘頭の外側面に達するのである(図534, 543).

 神経支配:橈骨神経による.

 脊髄節との関係:C. VI, -VII, VIII, そして(Bolkによれば)長頭はC. VI~VIII,尺側頭はC. VII, VIII,橈側頭はC. VI, VII, 肘筋はC. VII, VIIIである.

 作用:この筋は前腕を伸ばすもので,しかも前腕は尺側頭と橈側頭とによって直角にまで挿ばされる.そして長頭が前腕の伸びを完全にする.しかしこの筋はまた上腕の伸筋としてもわずかな程度ではあるがはたらいており,他方また上腕の内転筋としてのはたらきは著しいものである(R. Fick).

 肘筋は他の三頭筋尺側頭の終筋束Musculi subanconaei(肘下筋)とともに,同時に関節包の緊張筋としても作用し,それは肘関節をのばすときにその嚢の壁が関節腔にはまりこまないように保護しているのである.すなわち尺側頭の深部に属するいくつかの筋束は他のものといっしょに終腱に達するのではなく,肘下筋として肘関節包に固着している.

 変異:この筋はときに4頭をもつことがある.第4の頭は肩甲骨の腋窩縁,烏口突起,肩関節包,または上腕骨から来ている.肩甲下筋,広背筋,大円筋などの諸筋とこの筋との結合が記載されている.Krauseによれば,その長頭の腱性の起始はほとんど常に1本の腱条によって広背筋の腱と続いている.

 大と小の両円筋肩甲下筋,上腕三頭筋の長頭および上腕骨の外科頚によって2つの重要な隙間が境されているその1つは三角形の筋隙Muskellochであり,他は四角形のものである(図524, 530, 534).

 外側腋窩裂laterate Achsellücke,すなわち四角形の筋隙viereckiges Muskeltochは上腕骨の外科頚,上腕三頭筋の長頭,大円筋,小円筋および肩甲下筋によって境されている.ここを腋窩神経と背側上腕回旋動脈が通り抜けている.

 内側腋窩裂mediate Achsellückeすなわち三角形の筋隙dreieckiges Muskeitochは上腕三頭筋の長頭,大円筋および小円筋によって作られ,ここを肩甲回旋動脈が通り抜けている.

肘部の粘液嚢Schleimbeutel der Ellenbogengegend

 肘部には上に述べた二頭筋橈骨嚢のほかになおいくつかの浅層あるいは深層の粘液嚢があるが,これらについては筋学の項で述べるのが最もよいと思う.これらの粘液嚢の名前を次にあげる.

A. 浅層すなわち皮下の粘液嚢oberflächliche, unter der Haut liegende Schteimbeutel

1. 肘頭皮下包Bursa subcutanea olecran

 これは肘頭の後面および上腕三頭筋の腱の上で皮下にある.

2. 上腕骨橈側上顆皮下包Bursa subcutanea epicondyli humeri radialis

 これは上腕骨の橈側上顆と皮膚との間にある.

3. 上腕骨尺側上顆皮下包Bursa subcutanea epicondyli humeri ulnaris

 これは上腕骨の尺側上顆と皮膚との間にある.

B. 深層にある粘液嚢tiefer liegende Schleimbeutel

4. 肘頭腱内包Bursq intratendinea oiecrani

 これは肘頭の近くで上腕三頭筋の腱の内部にある粘液嚢である.

5. 肘頭腱下包Bursa subtendinea olecrani

 その存在は不定で,上腕三頭筋の腱と肘頭の上端との間にある.

6. 骨間肘包Bursa cubiti interossea

 その存在は不定で,上腕二頭筋の腱と斜索Chorda obliquaとの間にある.

腕の運動に際しての筋活動(R. Fickによる)

a)この課題の出発点としては垂直に下げた腕を基本の姿勢とする.

1. まっすぐ前方にあげるときErhebung gerade nach vornには三角筋と大胸筋との鎖骨部および上腕二頭筋の両頭が[外]側鋸筋,僧帽筋(の中部と下部)といっしょに作用する.

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最終更新日13/02/03

 

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