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この筋は豆状骨の近位端に停止する.その停止部の続きとしては豆鈎靱帯Lig. pisohamatulnおよび豆骨中手靱帯Lig. pisometacarpicumがある(図547, 548).

 その腱と豆状骨との間には,しばしば1つの粘液嚢(尺側手根屈筋腱嚢Bursa tendinis m. flexoris carpi ulnaris)がみられる.この筋の上腕頭は尺骨神経溝を橋渡ししており,尺骨神経はその上腕頭を貫いている.

 神経支配:尺骨神経による.

 脊髄節との関係:C. (VII), VIII, Th. I.

 作用:この筋は手を曲げ,且つこれを尺側に外転する.

 この筋の変異はその停止部にみられる.その腱はときどき線維を前腕筋膜あるいは手掌腱膜に送っている.これは豆状骨を越えて走り,まっすぐに第5中手骨に達する.M. flexor carpi ulnaris brevis(短尺側手根屈筋)という筋はごくまれにみられるもので,尺骨から起り,豆状骨に停止する.(アイヌ人にM. flexor carpi ulnaris brevisが10体側のうち2体側に見られた(佐野好:福岡医科大学雑誌, 24巻, 57~59,1931).)

 M. epitrochleoanconaeus(滑車上肘筋)という小さい筋はかなりしばしば現われるもので,ここで述べておくのがよいと思う.これは尺側上顆から起り上腕骨の尺骨神経溝を橋渡しして尺骨に達している.そして尺骨神経に支配されるので,この点からも上腕三頭筋とは縁のうすいものである(Gegenbaur).

[図536, 537]右腕の尺骨および橈骨における筋の起始と停止

 図536 その掌側面を示す.

 図537 その後面を示す.

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最終更新日13/02/03

 

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