Band1.435   

 神経支配:橈骨神経による.

 脊髄節との関係:C. V, VI.

 作用:この筋は前腕を曲げる.その曲げるはたらきのほかに,同時に視骨を回す筋でもあり,前腕を曲げた状態では橈骨を交互に回内,回外させることができる.

 変異:この筋の欠如は橈骨が欠けている例にみられる.この筋の全体が重複していることはまれであるが,相ならんであるいは重なって付着している2つの腱が見られることは比較的に多い.その起始は三角筋の停止にまで達していることがある.この筋が第3中手骨,舟状骨,大多角骨に停止することが見られている.また前腕筋膜,三角筋,上腕筋,長母指外転筋,長橈側手根伸筋との結合が知られている.

2. 長橈側手根伸筋M. extensor carpi radialis longus. (図538, 542, 543)

 この筋は腕橈骨筋より下方で上腕骨の外側の骨稜および橈側上腕筋間中隔において橈側上顆までの範囲から起る.そしてこの筋は背側手根靱帯の下を通るときには短橈側手根伸筋と共通の管を通り,第2中手骨の底に終るのである(図542, 543, 544).

3. 短橈側手根伸筋M. extensor carpi radialis brevis. (図538, 542, 543)

 この筋は上腕骨の橈側上顆,橈骨輪状靱帯およびこの筋の起始と総指伸筋の起始とのあいだに入りこんでいる1つの腱板から起る.その終腱は第3中手骨の底に固く着いている(図542, 543, 544).

 この腱と上腕骨とのあいだには1つの粘液嚢,すなわち短橈側手根伸筋嚢Bursa m. extensoris carpi radialis brevisがある.

 神経支配(長,短の両橈側手根伸筋):橈骨神経による.

 脊髄節との関係:C. (V),VI, VII.

 作用(長,短の両橈側手根伸筋):これらの筋は手を伸ばし,これを橈骨がわに外転させる.さらに前腕を曲げる運動にも両方の筋があずかっている.長橈側手根伸筋は前腕を伸ばした状態では回外筋としてもはたらく,しかし前腕がすでに直角に曲げられているときには純然たる回内筋としてはたらくのである(R. Fick).

 長,短の両橈側手根伸筋は比較解剖学的にみても,発生学的にみても単一の筋と見なされるべきものである(Le Double).

 変異:長,短の両橈側手根伸筋はその筋腹が程度の差はあるが,かなりの広さにわたって合していることがあり,またたがいに線維束を交換していることもある,時として過剰停止が第3中手骨にみられるが,それが第4中手骨にみられることはごくまれである.

4. 総指伸筋M. extensor digitorum communis, Fingerstrecker. (図543, 544)

 この筋は紡錘形をなし,橈側上顆から起っていて,そこでは短橈側手根伸筋と癒合しており,また一部は前腕筋膜から起っている.その筋腹からは4つの腱が発して,これらの腱はいっしょになって背側手根靱帯の下では第4の管を通過し,次いでたがいに離れて,第2~第5指に達し,ここでは指背腱膜に移行している.この腱膜は中節骨および末節骨の底に終るのである.

 第5指にゆく腱が欠けていることがある.そのときには第4指にゆく伸筋の腱から出る1つの腱束がその代りをしている.これに似た腱束,すなわち腱連結Juncturae tendinumが第4指の腱と第3指の腱とを連ね,第3指の腱と第2指(示指)の腱とを連ねている.最後に述べた連結は最もまれなものである.こういう腱連結は個々の指の伸展の独立性を制限している(図544).

 伸筋の腱の広がりかたの単一性は哺乳類では入よりもずっと大きい程度に存在する.

 神経支配:橈骨神経による.

 脊髄節との関係:C. VI, VII, VIII.

 作用:この筋は第2~第5指および手全体を伸ばす.

 変異:その腱についてはすでに述べた事がらのほかに,1つの過剰の腱が母指に達していることがある.(日本人における総指伸筋の第4腱の欠如は男208体側のうち17体側(8.2%),女93体側のうち15体側(16.1%)である(小金井良精・新井春次郎,敷波重次郎:東京医学会雑誌,17巻,127~131,1903).)

 総指伸筋が別々の4つの筋腹に分れていることはいく度も記載されている.

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最終更新日13/02/03

 

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