歴史的な偉大な解剖学書
この筋は浅頭Caput superficialeと深頭Caput profundumとを有っている.浅頭は横手根靱帯から起って,橈側の種子骨に停止している.深頭は大と,小の両多角骨および有頭骨から起る.これもやはり橈側の種子骨に停止する.この深,浅両頭のあいだを長母指屈筋の腱が通っている.
神経支配:浅頭は正中神経, 深頭は尺骨神経による.
脊髄節との関係:C. VI, VII.
作用:この筋は母指の基節骨を曲げる.
変異:まれに欠如する.
4. 母指内転筋M. adductor pollicis. (図545~548)
第3中手骨の全長にわたって起るもの,すなわち横頭Caput transversumと,これに隣接する手根骨およびそこにある靱帯から起るもの,すなわち斜頭Caput obliquumとがある.しばしば第2および第5中手骨からの筋束が加わっている.その終腱は第1中手指節関節の尺側の種子骨に停止する.
神経支配:尺骨神経の深枝による.
脊髄節との関係:C. VIII, (Th.1).
作用:この筋は母指を内転させる.
変異:斜頭と横頭とのあいだのすきまの広さに個体差がある.
1. 短掌筋M. palmaris brevis. (図545)
皮下にある筋で,長掌筋の一部で手掌の範囲にあるものと解しうる.この筋は手掌腱膜の尺側縁ではじまり,手の尺側縁で皮膚に入っている.
神経支配:尺骨神経による.
脊髄節との関係:C. VIII, Th. I.
作用:この筋は小指球の皮膚を橈側に引き,そのときに皮膚にいくつかの小さいくぼみを作ることができる.
変異:この筋はかなりしばしば欠如する,また時としてははなはだ弱い発達を示すことがある.
2. 小指外転筋M. abductor digiti quinti. (図544~546)
豆状骨と横手根靱帯とから起り,第5指の基節骨の底の尺側縁に達する.
神経支配:尺骨神経による.
脊髄節との関係:C. VIII, Th. I.
作用:この筋は小指を外転する.
変異:まれに欠如し,またしばしば短小指屈筋と癒合している.2頭あるいは3頭をもつことがある,その起始が豆状骨を越えてさらに上方へ達していることもある.
3. 小指対立筋M. opponens digiti quinti, Kleinfingergegensteller. (図544~548)
有鈎骨鈎および横手根靱帯から起り,第5中手骨の尺側縁に固着する.
神経支配:尺骨神経による.
脊髄節との関係:C. (VII), VIII, (Th.1).
作用:この筋は小指を母指に対して対立させる.
変異:ときとして欠如する.
4. 短小指屈筋M. flexor digiti quinti brevis. (図545, 546)
横手根靱帯ならびに有鈎骨鈎から起り,小指外転筋の終腱と合する.
神経動配:尺骨神経による.
脊髄節との関係:C. (VII), VIII, (Th.1).
作用:この筋は小指を曲げる.
変異:欠如することがまれでない,また小指外転筋と合していることがある.
最終更新日13/02/03