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関節の近くにはごく細い線条だけがみられ,これは横に,あるいは斜めに,または交叉して走っている.それゆえ腱鞘の線維性の部分が種々な形をとるのに対して[手指の]鞘状靱帯Ligg. vaginalia digitorum manus, [手指の]輪状靱帯Ligg. anularia digitorum manus, [手指の]十字靱帯 Ligg. cruciformia digitorum manusという名前がつけられている(図545547, 549).

 この装置は一方では腱が容易に滑ることができるようにし,他方ではこれらの腱をその位置に保持し且つ保護していることが明かである.またさらにこれが腱に血管をみちびいていることはすでに述べたのである.

[図553] 手掌の腱鞘 色素を注入してある. (W. Spalteholzより)

脈管や神経が筋膜を貫く場所(図554, 555)

 上肢の筋膜は皮膚の血管および皮膚の神経がとおるための数多くの孔をもっている.

 橈側皮静脈は,三角筋と大胸筋とのあいだの溝の中に続くために,肩の近くで上腕筋膜を貫いている.尺側上腕二頭筋溝では,その長さのおよそまん中に尺側皮静脈と尺側前腕皮神経が通るための,著明な筋膜の尺側皮静脈裂Basilifeaschlitz der Fascieがある.さらに上方には,同じく内側面に尺側上腕皮神経の出る小さい孔がある.橈側前腕皮神経はこの筋膜を肘窩において,上腕二頭筋の外側縁のそばで貫いている.腋窩神経の皮枝である橈側上腕皮枝は三角筋の後縁の中央に相当するあたりでこの筋膜から外に出る.腕にゆく橈骨神経の両皮枝,すなわち背側上腕皮神経と背側前腕皮神経とは,たがいにはなはだ近く(その距離は1~2cm)橈側筋間中隔の上端のあたりでこの筋膜から出ている.なお肘窩には,腕の深層の静脈と浅層のそれとを結合する静脈が貫いて通る場所があるが,この場所は個体的に変化が多い.

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最終更新日13/02/03

 

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