Band1.452   

 大腿骨の大転子とこの筋の内面とのあいだには大転子筋膜下嚢Bursa trochanterica subfascialis(図558)という1つの大きい粘液嚢がある.また別の粘液嚢すなわち大臀筋坐骨嚢Bursa ischiadica m. glutaei maxlmiがこの筋と坐骨結節とのあいだにあるがその存在は不定である.さらに2,3の存在不定な粘液嚢が大臀筋の腱と臀筋粗面とのあいだにある.これが大臀筋大腿骨嚢Bursae glutaeofemorales(図558)である.

 皮膚の臀溝Sulcus glutaeus, Gesäßfurcheと大臀筋の下縁とはたがいに一致しているのではなくて,鋭角をなして交わっている(図594).

 神経支配:下啓神経による.

 脊髄節との関係:L. (IV),V, S.I(II).

 作用:この筋の上部は大腿筋膜を緊張させるもので,大腿筋膜張筋といっしょに腸脛靱帯にはたらき(図572),かくして脛骨にその作用がおよぶ.特に下腿を伸展したときの終りに大腿が外旋するに際して脛骨に対する大臀筋のはたらきがみられる(321頁を対照せよ).

 臀筋粗面に停止する大臀筋の下方部は下肢を外方に回して内転するようにはたらき,上前方の部分は外側に挙げるはたらきをする.足を固定したままで両側のこの筋が共同してはたらくときには,骨盤が起こされる.この筋は全体として大腿ないし骨盤を伸ばす.たとえば階段をのぼるときにそれが見られる.腸腰筋がその拮抗筋である.

 変異:この筋はときにたがいに重なり合った2層よりなっている.仙結節靱帯,仙骨あるいは尾骨からの起始が存在しないことがある.

[図557]股関節周囲における筋の停止と滑液包前方よりみる.

2. 中臀筋M. glutaeus medius. (図556, 558560, 572)

 これは三角形の,厚い力つよい筋で,その下部は大臀筋に被われて寛骨の上臀線,後臀線ならびに腸骨稜の外唇のあいだの部分,およびこの筋を部分的に被っている大腿筋膜から起り,強大な広い腱をもって大転子に停止し,大転子の尖端の全部を包んでいる.この筋の前方の線維は斜めに後下方へと走り,その後方の線維は斜めに前下方へと走り,中央の線維はまっすぐに下へと走る.その前方の部分は大腿筋膜張筋に被われている.

S.452   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る