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 変異:この筋は完全に欠けていることがあり,また全長にわたって重複していることがある.筋と腱との間の量的関係はすこぶるまちまちである.この筋がまったく筋性であることもあり,まったく腱性であることもある.その起始は(ごくまれに)仙結節靱帯の上に延びていることがある.斜膝窩靱帯は欠けていることがある.ごくまれにこの筋の停止腱の続きが1つの筋すなわち下腿(腓腹)筋膜張筋M. tensor fasciae cruralis(suralis)を介して下腿筋膜に達していることがある.

3. 大腿二頭筋 M. biceps femoris. (図556, 558, 559, 572, 573, 575)

 その長頭Caput longumは坐骨結節から,その短頭Caput breveは大腿骨稜の腓側唇の下半から起る.その2頭はたがいに合して,皮膚を通して容易に触れることのできる強い腱によって膝関節の腓側側副靱帯のうしろで腓骨小頭に停止している.一部の腱線維は腓側側副靱帯の内側をほとんど水平方向に前方に走って,脛骨顆に固着している(図447).他の腱線維は腓側側副靱帯の外側を通って下腿筋膜に達している.

 大腿二頭筋の起始腱と半膜様筋のそれとのあいだには近位大腿二頭筋嚢Bursa m. bicipitis femoris proximalisがある(きわめてまれ).この停止腱と腓側側副靱帯とのあいだには遠位大腿二頭筋嚢Bursa m. bicipitis femoris distalisがある.

 神経支配:長頭は脛骨神経に,短頭は腓骨神経による.

 脊髄節との関係:長頭はL. V, S.1, II, 短頭はL. (IV). V, S.1(II).

 作用:大腿をうしろに伸ばし且つこれを内転し,下肢を固定しているときには骨盤を起し,下腿を曲げ且つこれを外方に回す.

 変異:短頭は欠けていることがある.長,短の両頭がまったく独立していることがあり,そのときにはそれぞれ1つずつの腱をもって腓骨小頭に停止している.その停止腱がM. tensor fasciae suralis(腓腹筋膜張筋)という筋に移行していることも少くない.長,短の両頭が過剰筋束を受けていることがある.長頭の過剰筋束は仙骨,尾骨,坐骨結節,仙結節靱帯,大臀筋から始まっており,短頭のそれは大腿筋膜,大腿骨稜,大腿骨の腓側顆,大内転筋,外側広筋,仙結節靱帯から起っている.

c)下腿の筋群Muskeln des Unterschenkels
α. 前方の筋群すなわち伸筋群vordere oder Extensorengruppe

1. 前脛骨筋M. tibialis anterior. (図573, 574, 581)

 この筋は三角形の横断面をもつプリズムの形であって,脛骨の外側面および骨間稜,下腿骨間膜および下腿筋膜から起っている.その腱は平たくて強いものであり,十字靱帯の内側の管を前脛骨筋腱鞘Vagina tendinis m. tibialis anteriorisという腱鞘に包まれて通り,第1足根中足関節の内側面に達し,この関節包を補強し,第1楔状骨および第1中足骨の足底面に固着している(図459).

 これら2つの骨とこの腱とのあいだには前脛骨筋腱下包Bursa subtendinea m. tibialis anteriorisという粘液嚢がある.

 神経支配:深腓骨神経による.

 脊髄節との関係:L. IV(V).

 作用:この筋は足の背屈に際して作用し,足の内側縁を挙げ,また足を固定しているときには下腿を前方に曲げる.

 変異(前脛骨筋はシナ人50体100肢のうち92%はその筋腹の下端が十字靱帯に達せず,また75%は停止腱が2分している(劉曜曦:満州医学雑誌17巻,391~392,1932).):停止腱が2つの束に分れていることはそれが分れていない場合よりもいっそうまれである.この腱の2分がまれに筋肉質にまで及んでいることがある.

 ときには1つの腱束あるいは筋束(M. tensor fasciae dorsalis pedis(足背筋膜張筋))を十字靱帯にあたえていることがある,まれに1つの細い腱を第1中足骨の小頭に,また母指の基節骨の底にあたえていることがある.

2. 長母指伸筋Mextensor hallucis longus. (図574, 581)

 下腿骨間膜および腓骨の中間部の内側面から起る.その腱は筋の前縁で始まり,十字靱帯の下でその中央の管を貫通し,長母指伸筋腱鞘Vagina tendinis m. extensoris hallucis longiに包まれて第1中足骨の背側面の上にある.

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最終更新日13/02/03

 

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