Band1.476   

2. ヒラメ筋M. soleus, Schollenmuskel. (図573, 575, 578, 579)

 脛骨の膝窩筋線および脛骨の内側縁,腓骨小頭および腓骨の外側の骨稜の上1/3,また脛骨および腓骨における両起始の間に張っていてヒラメ筋腱弓Arcus tendineus m. soleiと呼ばれる1つの腱弓からも起る(図578).その強大な幅の広い終腱は腓腹筋の終腱と合して下腿三頭筋腱Tendo m. tricipitis surae(Achillis)となっている.

 神経支配:脛骨神経による.

 脊髄節との関係:L(IV)V, S. III.

 作用:この筋は足を足底の方に曲げ,踵を挙げる.足を固定しているときには下腿をうしろに引く.

 変異:この筋は全く欠けていることがあり,また重複していることもある.その場合に第2のヒラメ筋は1つの特別な腱によって踵骨に付着する.ヒラメ筋の深い方の面から起って,踵骨に停止する過剰筋束が記載されている.またM. tensor fasciae plantaris. (足底筋膜張筋)というきわめてまれに見られる筋はヒラメ筋の起始の下で脛骨の膝窩筋線から起り,破裂靱帯または足底方形筋に停止し,あるいは足底腱膜に移行するのである(W. Krause).

3. 足底筋M. plantaris. (図578)

 はなはだ変化に富む網長い筋で,これも欠如していることがある.この筋は腓腹筋の腓側頭より上方あるいは下方で大腿骨の腓側顆および膝関節包から起り,薄くて長い腱をもって腓腹筋および・ヒラメ筋の走向と交叉し,これら両筋のあいだのところでアキレス腱の内側縁に達する.ここでアキレス腱と合していることがあるが,あるいはアキレス腱とは別になって足関節包に達し,または踵骨にまで達して,ここでその線維がほぐれて消失している.

 神経支配:脛骨神経による.

 脊髄節との関係:LIV, V, S. I.

 作用:腓腹筋のはたらきを補助する.

 変異(日本人における足底筋の欠如は,男213体側のうち26体側(12.2%).女87体側のうち8体側(9.2%) (小金井).154体側のうち12体側(7.8%) (松島)である(小金井良精,新井春次郎,敷波重次郎:東京医学会雑誌,17巻,127~131,1903;松島伯一:実地医家と臨床,4巻,67~69, 750,1927).):この筋は6.8%に欠けている(Le Double).

 まれにこの筋が腓骨からおこる.大腿骨,腓側側副靱帯,膝関節の関節包からの副筋束を受けていることもある.その停止は著しく変動する.すなわちこの停止が下腿の中央部で結合組織の中に,下腿三頭筋腱嚢に,足底腱膜に,破裂靱帯に見られるのである.

4. 膝窩筋M. popliteus. (図578580)

 この筋は三角形で,平たくて短い.大腿骨の腓側顆ならびに膝関節の関節包から起り,その腱はこの関節包と癒合しており,脛骨の膝窩平面に固着している.

 その起始腱の下方に膝窩筋嚢Bursa m. popliteiという粘液嚢がみられ,これは常に膝関節の関節腔と,いっそうまれには脛腓関節と連絡している.この連絡しているものが膝窩筋腱鞘Vagina tendinis m. popliteiである.

 神経支配:脛骨神経による.

 脊髄節との関係:L. IV, V, S. I.

 作用:この筋は膝を曲げ,下腿を内方に回す.

 変異:この筋の欠如は2例にみられた.またその腱の中に種子骨が1度見出されている.副筋頭がきわめてまれなことではあるが,足底筋といっしょになって大腿骨の腓側顆あるいは腓腹筋の腓側頭の中の種子骨から起っている.

 M. peronaeotibialis(腓脛筋)は腓骨小頭から起って,脛骨の膝窩筋線に停止する1つの過剰筋である.--Fürst C. M., Der Musculus popliteus und seine Sehne. Lund ,1903.

5. 長指屈筋M. flexor digitorum longus,  (図579, 587)

 ヒラメ筋より下方で脛骨の後面ならびに後脛骨筋に沿って下方に走る1つの腱弓から起る.その腱は脛骨踝のすぐ上方で後脛骨筋の腱の外方(皮膚に近い方)でこれと交叉し(図580).破裂靱帯Lig. laciniatumに被われ,長指屈筋腱鞘Vagina tendinis m. flexoris digitorum longiに包まれて載距突起の遊離縁および足底に達し,ここでは長指屈筋の腱はその背側にある長母指屈筋の腱の下を通って交叉し,そのさい両者の腱のあいだに結合がみられる.

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最終更新日13/02/03

 

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