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2. 恥骨筋膜Fascia pectinea. (図591)

 腸恥隆起の内側で,恥骨櫛の全体に沿って第2の筋膜板,すなわち恥骨筋膜Fascia pectineaが起っており,これは恥骨筋を被い,これとともに大腿の前面に達する.いま述べたごとく腸恥隆起のところで腸骨筋膜と恥骨筋膜とが相合し,たがいに続いている.

3. 大腿筋膜Fascia lata. (図493, 592, 594)

 大腿筋膜は上方は鼡径靱帯と,外側は腸骨稜および仙骨と,内側は恥骨の結合部および坐骨の恥骨部と続いており,この大きな輪郭線から下方へと強大な線維性の筒となってのびていて,この筒は大腿の筋群全部を包むのである.

 鼡径靱帯の内側部のわずか下方に大伏在静脈が大腿静脈に入るところがある.大腿筋膜にはここに鎌形を呈する切り抜きがあり,その縁は鎌状縁Margo falciformis と名づけられていて,その上方の角は上角Cornu proximaleといわれ,鼡径靱帯あるいは裂孔靱帯または恥骨筋膜に付着するが,下角Cornu distaleは恥骨筋膜と合流している(図493, 592).この上角が弓状を呈する1線によって下角とつながっていると考えると鎌状縁とともに1つの卵円形の輪をなしているわけで,これが外大腿輪Anulus femoralis externus, äußerer Schenkelringである.これに囲まれたへこみは,その底に大腿動静脈の一部が多少の差はあるがそこに見えるのであって,このへこみは卵円窩Fossa ovalisと呼ばれる(図493, 592).その縦径は個体差が大きくて2cmと6cmとのあいだである.

 卵円窩は粗密の程度に差のある1枚の薄い膜,すなわち卵円窩の篩板Lamina cribriformis fossae ovalisで満たされており,この節板は鎌状縁と大腿筋膜ならびに恥骨筋膜と続いている.その名前は小さい動脈および静脈,リンパ管および神経が通るための多数の孔によるのである.

大腿管Canalis femoralis. (図591)

 大腿輪と鎌状縁とのあいだにある通路が大腿管Canalis femoralis, Schenkelkanalであり,これは最も重要なヘルニア管の1つである,大腿管への入口はその最も狭い場所であり,ヘルニア嵌頓Einklemmttngen(lnkarzeratienen)がここではなはだしばしばおこる.

 大腿輪Anulus femoralis(図499)は内側は裂孔靱帯,外側は大腿静脈および血管鞘によって境されて,鼡径靱帯の腹方,恥骨櫛および恥骨筋膜の背方にある.裂孔靱帯からは1つの結合組織の束が横の方向に恥骨櫛に沿って走っている.これが恥骨靱帯Lig. pubicum(Cooperi)である(図435).

 大腿輪は開いた隙間をなしているのでなく,腹横筋膜の一部によって被われている.これがすでに375頁で述べた大腿輪中隔Septum anuli femoraiisである.そのほかさらに疎性結合組織の集りがここを満たし,また通常ここに1つのリンパ節が存在し,これは特にローゼンミューラー腺Rosenmüllersche Drüseと呼ばれる.リンパ管が大腿輪中隔を貫いている.腹横筋膜の向うがわでは腹膜Peritonaeumがその閉鎖にあずかっている.しばしば腹膜はこの場所に1つの小さい外方への突出部を形成している.

 大腿管の前壁は大腿筋膜の鎌状縁の上角によって作られ,後壁は恥骨筋膜により,外側壁は大腿動静脈の結合組織性の鞘によって作られている.

 大腿ヘルニアが皮下に達するときには,卵円窩から外に現われる.ここには筋板と多数の浅鼡径リンパ節とがある.

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最終更新日13/02/03

 

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