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鎌状縁の上角が鼡径靱帯あるいは裂孔靱帯に接着しているときには,大腿管は実に短いのであるが,恥骨筋膜における上角の停止がずっと下方にずれると,それとともに大腿管は長さを増すことになる.その長さは特に上角の停止する位置のいかんによるのである.

 大腿筋膜は外側面では2つの腱,すなわち大腿筋膜張筋の腱および大署筋の腱の大部分が放散することによって強められている.この両腱の放散する線維群は前とうしろから中央部の特に強くなっている部分に接していて,この中央部の強い線維束群は独立して腸骨稜から起るもので,腸脛靱帯Tractus iliotibialisと名づけられている(図572).特に強くなっているこれら3つの部分が全部いっしょになり,そこでは線維の流れがはっきりとその走路を示しており,下方は脛骨の腸脛靱帯粗面にまで迫跡されるのであって,この有力な線維群がここに固着して,膝関節の固定に1つの重要な役割をなしている(321頁).

 膝のところでは大腿筋膜は膝蓋骨とだけではなく,この骨の両側で膝関節包と広い範囲でかたく結合している.これに反して関節包の後壁では,そのあいだにたくさんの脂肪塊, 大きい血管や神経が入り込むので筋膜が関節包からますますはなれている.

 膝のあたりから足までの所は下腿筋膜が張っている.

4. 下腿筋膜Fascia cruris. (図593, 595)

 この筋膜は皮下に遊離している下腿骨の面および骨稜とかたく結合し,伸筋群の起始とも密接に合している.前脛骨筋と長指伸筋とのあいだで線維性の中隔である前下腿筋間中隔Septum intermusculare cruris anteriusが深いところに入りこみ,もう1つの中隔である後下腿筋間中隔Septum intermusculare cruris posteriusは長指伸筋と長腓骨筋とのあいだにあり,両者は近くの筋群にその起始する面を提供している.

 下腿三頭筋とさらに深くにある筋団との間には下腿筋膜の深葉tiefes Blatt der Fascia crurisが広がり,これは側方でその浅葉と続いている.

 伸側の筋膜は脛骨,腓骨両踝の上方で幅が2~3横指の範囲で強くなっており,ここが下腿横靱帯Lig. transversum crurisといわれる(図573, 574, 581, 582, 593).

 下腿横靱帯より下方では,足にまで達する十字靱帯Lig. cruciformeが続いている.その線維束は脛骨,腓骨両踝から出て交叉し,足の内側,外側両縁に達している.しかしその上方の外側の脚がよく発達していないか,あるいはあまりきわ立っていないため,しばしばこの靱帯がただY字形をしていることがある(図573, 574, 581, 582, 593, 596, 597, 598).

 十字靱帯に被われて,3つの長い伸筋の腱がそれぞれの腱鞘に包まれて足背に達している.

 破裂靱帯Lig. laciniatumが脛骨踝から踵骨に広がり,後脛骨筋および長指屈筋の腱を被っている(図575.598).

 外側面には腓骨筋支帯Retinacula tendinum mm. fibulariumがある.上腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium proximale(図573, 597)は腓骨踝から踵骨に張っていて,長と短の両腓骨筋の腱をしっかりと保持している.下腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium distaleは隔壁によって,長短それぞれの腓骨筋のための2つの管に分れ,踵骨の外側面に始まり且つ終っている(図460, 573, 597).

 腱が通り抜ける場所はどこもみな滑液鞘で内張りしてある(図596598).

 足背には(図596)3つの腱鞘(日本人における足の腱鞘および滑液包については,吉野佐次(東京医学会雑誌,52巻,881~924,1938)の詳細な報告がある.)がある,すなわち前脛骨筋の腱を包むもの,長母指伸筋の腱を包むもの,長指伸筋の腱を包むものである.これらの腱鞘は十字靱帯のやや上方から始まって,それぞれ第1楔状骨まで,第1中足骨の底まで,踵骨と立方骨とのあいだの関節にまで達している.

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最終更新日13/02/03

 

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